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愛しき太陽(てだ)に死す ―わが青春の宇宙皇子(うつのみこ)―

昭和末期に正真正銘の中学生、まさに中二病だった私。藤川桂介著『宇宙皇子』を片手に、近所の明日香村をふらついていました。
正直、小説は概要しか覚えておらず、ひたすら、いのまたむつみさんのカバー絵と挿し絵に魅入られていました。

©️いのまたむつみ

メルカリで『いのまたむつみ画集 宇宙皇子』『宇宙皇子Ⅱ』を見つけ、懐かしさ極まり、買ってしまいました。

©️いのまたむつみ

このカバー絵、最高です。
見つめる私を14歳に戻らせます。

©️いのまたむつみ

飛鳥時代を舞台に描く幻想歴史絵巻、昭和末期の当時は仕方ないのかもしれませんが男尊女卑があからさまで、またステレオタイプの権力抗争にも、申し訳ない、興味を持てませんでした。
しかし、この記事のタイトルを始め「明日香風よ挽歌を」「名もなき花々の散華」「一会に賭けた日々」など、巻題がどれも目に焼き付く素晴らしさで、作者の藤川桂介氏のコピーライターとしての才能は、ずば抜けていたと思います。

©️いのまたむつみ

ただ、地上編8巻『愛しき太陽に死す』は、中二の心にはたまらなく響く「南の島の恋の唄」でした。

神を見た二人。愛を見た二人。
阿兒奈波(おきなわ)の太陽の下、皇子と各務は死んでいた――。

『愛しき太陽に死す』の帯に掲げられた煽り文句、天下一の煽り文句です。

私も人生折り返し、けれど面妖なことに日々あのころが近く感じられる、あのころ、子どものころ、「向こう側」から来て間なしのころ。

それはもはや「向こう側」に還りつつある証しなのか。

太陽に命を懸けて惜しくない、たましいの真夏へ。