
2025年11月12日、有給を取って天理市の古墳の麓に佇むホテルcofunia(コフニア)へ。コフニアは、オオヤマト古墳群の後期を代表するとても美しい古墳、西山塚古墳の、前方後円墳のくびれ、造り出しが築かれる辺りに沿って建てられた古民家を改装して造ったホテルです。
天理駅からバスに乗って、国道沿いのバス停から柿の木畑をオオヤマト古墳群の小高い丘陵地を東へ向かっててくてく歩くこと10分、萱生町の心洗われるような手入れの行き届いた環濠集落の家並みに癒されつつ、道を曲がって拓けた景色が、これ。
なんて美しい古墳! なんて美しい古民家!

ああ、私の稚劣な撮影技術では伝わらない、古墳の美しさも古民家の美しさも。

西山塚古墳の説明看板。この古墳の最寄りに、継体天皇皇后の手白香皇女(たしらかのひめみこ)の衾田陵と指定されている西殿塚古墳があります。しかし、衾田陵は3世紀に築造された古墳で、手白香皇女は6世紀に生存した人物なので、研究者間ではこの西山塚古墳こそ手白香皇女の陵墓と言われています。

コフニア、美しい古墳の麓に灯される明かりのように、山の辺の道のオアシスとなっていました、既に。
さて、今日はここで、里山の恵みと薬膳の知恵を体感するひとときのレッスン。


レッスン開始時間まで30分ほどあるので、西山塚古墳を探索。
ちなみに、この西山塚古墳、オオヤマト古墳群のなかで唯一、前方部がはっきりと北向きなのです。2022年に発表されたミラノ工科大学の研究で、前方後円墳の大半は太陽や月が昇る方向に向いていることが判明したので、西山塚古墳の構造からは後期古墳時代の死生観というものを考えさせられます
手白香皇女とは、仁賢天皇の娘で、弟に武烈天皇がいます。近江から招聘された継体天皇にとって、ヤマト王権直系の娘を得ることは死活問題でした。よって、この婚姻から生された皇子、のちの欽明天皇こそ、正統な王権を担う者として扱われたのです。
武烈天皇って、ほんとうにあんな暴虐非道な暗君だったのか。もしかしたら、継体天皇が正統な王朝を簒奪したのを隠蔽するためのプロパガンダなのかもしれない。
手白香皇女は、それらの事実をすべて知っているのだと。
手白香皇女の墓は、誰が築造を命じたのでしょうか。大阪府高槻市に墓を築いた夫からは遠く隔たった、古い古い、伝統のなかの伝統、ヤマト王権の中枢であるこの地に眠ろうと決めたのは皇女みずからの選択であったとしたら、痛快無比なのですが。

環濠集落がとても美しい。ここらへん、ちょっと住みたくなりました。

なかなかの傾斜! 歩きやすい靴で良かった。

お茶の木の花が咲いていて、とても良い香り。そのせいか、クマンバチが飛ぶ飛ぶ。

あー! これは素晴らしい! 大和盆地が四方八方、一望できる! 右手は北、生駒山が見える!

私の産土の二上山から、葛城山と金剛山の連なりまで一望! 大和三山、吉野山まで見える!

東へ向かって、龍王山。 戦国時代、十市氏によって山城が築かれている。その名も龍王城。

大国見山、石上神宮はあの麓。すごいわ、めちゃくちゃ見晴らしの良いところに築かれている、この古墳時代末期の前方後円墳。
最高の景色に見とれていると、突然、雉の雄鳥が叢から飛び立っていきました。野生の雉を見るなんて、初めて。
なんて綺麗なんだろう、ここは、亡くなった者も、生ける者も。

堪能したので下山。そう、下山。黒い土嚢を踏み外すと、崖から転落です。

さあ、10時30分、レッスンの開始。ホテルのフロントも兼ねる「火の棟」へ。もう薬膳鍋の下ごしらえがされていて、部屋中にスパイスの良い香りが充満!

このコフニアは、たくさんのボランティア各位にて改築改装されたのです。もともとは蜜柑農家だった古民家で、残っていた木材や道具類も捨てずに再利用されています。

ちいさいころ魔女になりたかった私、こんな薬草の宝庫、夢が叶ったようで、でもまだ夢のなかのよう。

蜜柑箱を再利用して作られた薬棚。ここにいるだけでうっとり、癒されます。

これが建築家の手を入れずに成された建物だなんて。人間の能力は無限です。

季節の果物のシロップ漬け。宝石のよう。

この季節のおすすめは、檸檬とのこと。

この厨(くりや)も、手作りなのです。ため息が出ます。

本日の参加者5名が集合したので、レッスン開始。コフニアでのこの講座、今日が初回なのです。まだ人口に膾炙していないだろうから、定員10名になることもないと予測して申し込みました。
あんまり大勢と賑やかに受けるより、ゆったりとした心地で受けたかったので、大正解。
さて、芹を始めとしたこの薬草たち、すべてコフニアの菜園から採られたものです。

スパイス。左奥から反時計回りに、当帰、蓬、肉桂、花椒(ホアジョア)、八角、陳皮、生姜、丁子、どれも芳香の塊!
先ずは、薬膳鍋を家で楽しむためのパックを自分で作ります。

好きなスパイスを好きなだけ、パックに詰める。私は陳皮と肉桂をたくさん詰めました。甘くて爽やかな風味が好きなので。そして、棗を一粒。
私の他の参加者各位、同じような年齢の女性たちで、薬膳と自然と古墳と奈良を愛する志を同じくする方々で、すぐに打ち解けました。良い方たちばかりで、楽しくて、嬉しかったなあ。
赤毛のアン、大草原の小さな家、秘密の花園、不思議の国のアリス、小公女、あしながおじさん、窓際のトットちゃん、虫愛ずる姫君、風の谷のナウシカ、六番目の小夜子、などなど、少女の成長物語には必ず、魔法のような食べ物、そして美しい花が、キーワードとしてありました。
少女とは、少年よりよほど魔物なのかもしれません。

おだしは、椎茸や切り干し大根など植物系のものが無難なのだと。コフニアには海外客も多く、宗教上での禁忌や肉食をしない主義の方々への配慮を講じないわけにはいかないので。
ですが、今日は大和地鶏をたっぷり使って、おいしい豆乳鍋を作ります。秋のこの時期、潤いを求めるのが薬膳の主旨なので。

キノコ類や野菜をたっぷり。私はどっちも大好き。白秋、秋にふさわしい優しい味のお鍋です。
コフニア代表の植物民俗研究家で薬膳師の前田知里先生の講義というか、お話しがとても楽しくて、参加者各位の生き様に照らし合わせての会話の枝葉が分かれに分かれ、女子会そのものの盛り上がりとなりました。
なんて楽しい、ほんとうに参加して良かった!

お食事の時間まで、お庭を散策。薬草園でもあるのです、コフニアのお庭。専属のガーデナーが丹精込めて設計施工されたお庭だそう。
山の辺の道を散策しているウォーカーが、何組もこのコフニアの敷地を覗いて行かれました。コーカソイドの女性二人連れのウォーカーが、とても素晴らしい外観のここは何? と言って、火の棟に入って来られました。今日は貸し切りなのでごめんなさい、そう前田先生が英語で謝っていらして。
海外からのウォーカー二人連れも、参加者の私たちと同年配、何か訴えかけるものがあるのですね、古墳の麓、緑あふれる古民家は、洋の東西の魔女の末裔に。

これは肉桂。大好きな甘い香り。

これは檸檬。これは爽やかな良い香り。

「大和の旬菜と季節の養生」メニュ。柿と大根の包み、高野豆腐のフリット、豆腐餻にインドネシアの発酵食品テンペをのせて。
前菜からして、もう、絶品!!

で、できあがった秋の豆乳鍋。棗がたっぷり、意識が飛ぶようなスパイスの芳香!!

菜園で摘みたての薬草をたっぷり使ったハーブティーにプーアール茶。薬膳鍋のための薬味もたっぷり効かせて。

地産の赤米のご飯。こんな滋養にあふれて心地良い自然の叡智を味わう御膳、幸せの骨頂!!

薬膳お鍋、棗の赤がかわいくて。これは男の人にはわからないかも、魔女の趣味だわ。

食後のデザートはお好みで注文。私は和紅茶のチャイを飲み物としてチョイス。すると、こんなまるで古墳時代の食器のようなポットとカップが!
大阪の作家さんのお手製で、ポットのデザインがひとつひとつちがっているのが愉快。

デザートは、酒粕のティラミスをチョイス。これがもう、目から星が出るほどの酒粕!! おいしいったらない!! 和紅茶のチャイもこれでもかというくらいスパイスがたっぷりで、おいしいったらない!!
和紅茶のチャイはおみやげとして購入しました。

で、水曜日のレッスンだけの特典、4室のホテルのお部屋を案内してもらえるのです。先ずは、金(こがね)の棟。向かって左の木の扉から入ります。

参加者全員、歓声を上げました。なんておしゃれなの!!

イギリスのアーティストが製作したオブジェが金(こがね)を表す。平屋ですが独立した棟なので、落ち着きます。

で、次、水の棟。白いベッドが見えています。

玄関の三和土に古瓦が敷き詰めてあって、これが青海波のようなので水の棟。

広い、ロフトのある部屋です。しかも、あんな鳥の巣箱のような空間まで設けられていて、びっくり!!

これは幼児は危険かも。そもそもコフニア、おとなのための空間です。

とても広いソファ。ここでずっとつどえます、鳥のように。

古墳のアーチが楽しい水の棟を後に、土の棟へ。玄関からもう、ドラマティック。

何? 洞窟? ここがコフニアの最も人気のお部屋なのですが。

うーわー!! これはアカン!! かっこよすぎる!!

トルコのカッパドキアかギリシアのサントリーニ島のよう、この白い土の部屋!!

水回りでもう、こんな、かっこよいったら!!

ひー!! バスタブが前方後円墳!!

こんなドラマティックな階段を上って。

ロフトの寝室は、窓から覗ける西山塚古墳の墳丘と同じ目線なのです。
なんか、ちょっと、畏れ多い。

向かって右端、木の棟へ。ここが一番広く使える部屋だとか。

おー、明るい!! ファミリー向けかもしれない。

ロフト、山小屋のよう!! ここはイベントの際には女性限定でシェアルームにもなるそうです。

ああ、楽しくて楽しくて、帰りたくなくなっちゃった。
仲良くなった参加者の方と、山の辺の道を散策しながら駅まで向かいました。
「また来る?」と訊かれて、「もちろん!」と答えて。
今日は私たちはパイオニアだったから少人数の参加でゆとりをもてたので、次回も人が集まりにくい日に参加しようと画策しました。
魔女は悪知恵が回るので。しかも眠れる皇女の腕(かいな)にて。


