ephemera

不在の方舟

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提出期限前日の4月16日に、奈良大学まで卒業論文の草稿を持参して提出。後は野となれ山となれ。

さて、昨年から災害対策として、部屋のひとつを窓付きの納戸として家具部屋にしました。目線より高い家具はキッチンに冷蔵庫と食器棚を残しただけで、それら以外の書架やワードローブや壁面収納など、すべて家具部屋に納めました。食器はもう、地震で割れても惜しみません。そもそも形ある物は必滅です。

もともと物を溜め込まないたちで、おまけに捨て魔でしたが、家具部屋を設けたことで居間も寝室も子ども部屋も、ますます風通し良くなりました。

しかし小狭い空間は潜在的に好きなので、楽屋のような屋根裏のような秘密基地のような家具部屋、ときどきそこに籠って本を読んでいます。もちろん、地震が来たら飛んで逃げますが。

そう、いつでも逃げられるように、生きていくしかない。

諸事情により、若いころに買った不動産はとっくの昔に手放しました。それからは、オーナーさんから分譲マンションの一部屋を借りて、身軽に気楽に生きています。この方法を我々に教えてくださった不動産会社の営業さんには、今も感謝しています。

そう、遊牧民のように、いつだって着の身着のまま脱出できる、どこへでも。

日本は沈みゆく船なのかもしれない。私は私を生きたので、悔やむことはほぼない。ただ、後から来た人たちが、笑って健やかであってほしいと、それくらいは求めさせてほしい。

この部屋は方舟かもしれない。たとえそこに私の姿がなかったとしても。