ephemera

影の世界にはもううんざり

もう、卒業論文以外の勉強、したくない。
卒業論文クリアしたら、卒業したい。
本音炸裂。

©O-DAN

この時シャロットの女は再び「サー・ランスロット」と叫んで、忽ち窓の傍に馳け寄って蒼き顔を半ば世の中に突き出す。
人と馬とは、高き台の下を、遠きに去る地震の如くに馳け抜ける。

ぴちりと音がして皓々たる鏡は忽ち真二つに割れる。
割れたる面は再びぴちぴちと氷を砕くが如く粉微塵になって室の中に飛ぶ。
七巻八巻織りかけたる布帛はふつふつと切れて風なきに鉄片と共に舞い上る。
紅の糸、緑の糸、黄の糸、紫の糸はほつれ、千切れ、解け、もつれて土蜘蛛の張る網の如くにシャロットの女の顔に、手に、袖に、長き髪毛にまつわる。
「シャロットの女を殺すものはランスロット。ランスロットを殺すものはシャロットの女。わが末期の呪を負うて北の方へ走れ」と女は両手を高く天に挙げて、朽ちたる木の野分を受けたる如く、五色の糸と氷を欺く砕片の乱るる中にどうと仆れる。

夏目漱石『薤露行』