かたたがえ飛鳥へ

2025.6.28 少年は鳥になれずにおとなになって 私は水鏡のなか私を探す

2025年6月28日、期末試験を終えた息子の希望で、琵琶湖の西岸、近江大津宮跡の近江神宮へ。お参りの前に腹ごしらえ、近江神宮の駐車場から徒歩10分の住宅街、一軒家レストランの「ZOO」さんへ。

行き当たりばったりで入ってしまったお店なので、あまり期待せず、待つこと5分、空いた奥の席へ案内されました。

オードブルというよりアントレかな、しっかりめの前菜は三種盛り、ラタトゥイユと酢の物と茄子の田楽、どれも手が込んだ味付けで、口に含むなり唸ってしまいました。とくに、茄子の田楽、絶品!

これは、もしかして、いや、もしかしなくても、大当たりのお店では?

サラダ、なんて手の込んだ。ひとつひとつの野菜に下ごしらえが施され、その丁寧さに惚れ惚れしました。丁寧さとは、真心そのもの。

サクサク昆布ころものチキン千切り野菜の甘酢あん。私の撮影技術ではおっつかなかった、繊細にして圧倒的な美味しさを約束した素晴らしいビジュアルを。チキンも野菜も美味美味美味!

ごはんも高級な近江米で、お味噌汁も目を剥くほど薫り高い御出汁が利いた白味噌仕立てで、青い鳥を見つけてしまったと大感激!

フワトロオムレツサイコロ野菜の和風カレーチーズあん。ちょっと、こんな見目麗しいオムレツカレー、見たことない。味見したところ、京都の料亭で出されるような最高の御出汁の味! 

「こんなおいしいオムレツ、食べたことない。あ、ママの作ったオムレツは別やで」と息子。なんでそうも気を回すのかな、君はたったの14歳なのに。

新玉葱の鹿児島産ポークミルフィーユカツ。これがもう、いい仕事をされていて、何層にも玉葱と豚肉が重ねられ、口当たり優しく、味は文句なしで、量もたっぷり。

この量、この質、これで1400円って、有り得ない。京都や大阪なら、その3倍の値段はつけられます。なんて良心的なお店なんだろう。

食後にデザートセットを注文。自家製パフェと挽きたてコーヒー。息子は自家製パインジュースを。

搾りたてのパイン果汁に、まん丸いパインシャーベットが浮かび、ほわほわの生クリームで覆われた、こんな手の込んだパインジュース、見たことない! まるでオーセンティックバーのカクテルのよう、これで350円だなんて!

パフェが来ました。写真には撮りませんでしたが、挽きたてのコーヒーは濃厚で重厚で、とても高級感があり、最近あまり甘いものを食べなくなった息子が、私のぶんのコーヒーを飲み干すようになり。

「パインジュース、ママがもらおうか?」と言うも、「このパインジュース、甘くなくて旨いから、全部はあげない」との返答。すっかり辛党になってしまったんだね、息子。

西瓜とメロンとマンゴーゼリー、自家製のミルク味のアイスクリームとブルーベリーのアイスクリーム、そして動物クッキー。私のパフェには栗鼠、息子のパフェには象が乗っていました。屋号がここで功を奏する。

最初から最後まで、感動の嵐。「今まで食べてきたなかで一番おいしいお食事でした」と、厨房のお姉さまがた3名に正直に告げると、「そんなこと言っていただけるだなんて、ほんとうにうれしいです! ありがとうございます! これからの励みになります!」と満面の笑みで喜んでいただけました。ホールご担当のご主人も、にこやかに微笑まれていました。

人生って面白いな。こんな素晴らしいお食事処に、偶然、回り逢えるのだから。

ZOOさん、真心こもった最高のお店で、月ごとに変わるメニューを追いかけて、これから定期的に近江神宮まで足を運ぼうと決めました。

さて、近江神宮へきちんとお参り。御祭神は天智天皇で、この境内が近江大津宮の一郭であることは間違いないようです。

大鳥居。朱で塗られていない鳥居も、いいですね。森閑とした参道といい、近江神宮はとても爽やかです。

三輪さん、奈良の大神神社に少し似ていると思いましたが、こちらのほうが空気はまろやかです。

ああ、でも、やはり、背筋が伸びる、この気配。

近江大津宮の地に立ったよう、たった5年で灰燼に帰した、まぼろしの都に。

参道を抜けて、この楼門の透きとおる鮮やかさ!

手入れの行き届いた境内、近江神宮、氏子各位からたいへん崇敬されていることがよくわかります。

天智天皇、葛城中大兄皇子、お寂しくされていない御様子、安堵しました。

かつらぎのみこ、あなたの同郷の者として、感無量。近江神宮にお参りしたのはこれが初めてで、でも、その門前は何度も通っていたことを思い出して。

私の小学生時代の夏は、ここ、近江大津宮に面したホテルのプールで琵琶湖を眺めながら泳ぐ、それだった。だからこの、まぼろしの湖の都には、少女だったころの私が息づく、今もなお。

湖の都で眠る、それが本意でなかったとしても、この光さんざめく美しい湖の都は、時代を切り開き駆け抜けていった一代の英傑であるあなたにこそ、ふさわしい。

かつらぎのみこ、あなたのたましいは鳥になれず、それでも、負った宿命から逃げずにおとなになったあなたを、私は慕ってやむことはない。

水鏡を覗くようにいずれ私もこの湖に眠る、かつらぎのみこ、あなたを追って。

湖の 入江に立てば 波がつぶやく
そこにはもう 少女の頃の君はいないと
風に舞って水に落ちた 白い帽子
濡れた服をしぼってくれた 優しい夏
会いたいのは あなたよりも そばかす気にしてた日の私
少年は鳥になれずに 大人になって
私は水鏡の中 私を探す
誰にもただ一度だけの夏があるの
それは恋と気付かないで 恋した夏

みずうみ ―ソルヴェイグの歌―
作詞 山川啓介
作曲 グリーグ
編曲 乾裕樹
歌 大貫妙子

【バブルコンポで聴く】 みずうみ(「ペール・ギュント」組曲第2番「ソルヴェイグの歌」から) / 大貫妙子
NHK「みんなのうた」より。初回放送は1983年6月〜7月です。クラシックの楽曲をベースに日本語詞を乗せた曲というと「白い道」(ヴィヴァルディの四季『冬』)が真っ先に思い浮かぶんですが、こちらはグリーグの作品が元になっています。大貫妙子の声...
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