
海へいこう ありす
夏になったら
誰にも内緒で海にいくんだ ふたりで
太陽が きみを
きれいにするたび月は 追いかけてきて
ぼくを ひとりぼっちにする過去と未来のはざまで
ぼくは また
きみの夏を みおくる海へいこう ありす
海へ 海へ――まぶしい夏に
ぼくは手をふる懐かしく
みおくりながら小林輪「みおくる夏」
日渡早紀『ぼくの地球を守って』
「瓊花さん、今年の夏はいかがお過ごし?」
「奈良大学のスクーリングには参加しません」
「賢明だね、今年の夏は灼熱地獄だから」
「レポートはいくつか受かっていますが、今年度の試験に間に合いません、諦めました」
「無理しないように、あなた心臓、ちょっと悪くしてるんだから」
「良くはなりませんよ、もう」
「Seeing off summer かな?」
「Summer to see off じゃないでしょうか」
「確かに to see someone off のほうが、特定の誰かを見送る気配が強まるね」
「では私は、私自身を見送るとします、この夏」