ならだより

2018.9.16 くすりがりノスタルジア

2018年9月16日、またも飛鳥へ。大阪市内出身、「街の子」の主人、のんびり羽を伸ばせる飛鳥がお気に入り。月に一度は飛鳥に向かいます。

昼食、奈良県立万葉文化館併設の、明日香村チャレンジショップASUCOMEの「すこ。」さん。11時30分、早めに来たつもりが、もうテーブルは満員。
私は大好物のスコーンランチ。ドリンクは、バタフライピーのノンアルコールカクテル。

息子はガパオライス。和風なので、柚子胡椒が添えられています。
おっしゃれ~!
「おしゃれだけじゃないよ、おいしいよ」、息子の正直な感想です。

主人は1000円のランチを注文。すごいボリューム! 唐揚げも大きくて、野菜もたっぷりで、シフォンケーキのデザートとドリンクのアイスコーヒー、大満足のランチに主人、大喜び。

息子もそうですが、男の人は、おしゃれなだけのごはんは、苦手です。その点、すこ。さんのランチは、男の人の胃袋もつかんで離さない。
大人気のお店、週末はお昼過ぎには完売です。

おみやげのスコーン。選べなくて、全種類購入しました。おまけに、スコーンのかけらをいただきました。
すこ。さんのスコーンは甘くなくて、私好み。

いつかASUCOMEを卒業されて、明日香村のどこかでお店を出されても、すこ。さんは大丈夫、繁盛されるはず。

飛鳥にごはんを食べに行く。そんな楽しみ方もあるのです。

午後からは、高取町へ。
明日香村、キトラ古墳を南へ進めば、自然に高取町の土佐街道へ入ります。
ここは、山城からふもとへ、武家町、町人町と展開される、景観が保全された城下町です。

いやあ、なかなかすてきな町です。
雛祭りの頃は、町家が雛飾りを一般に披露してくれるなど、華やかな時期もあるのですが、普段は登山客も観光客もまばら、でも、そのおだやかさが、たまらない。
まともに訪れたのは絶対に初めての町のはずですが、怒涛のノスタルジアに襲撃されました。

土佐街道、高取の土佐という地名、6世紀、大和朝廷の労役として土佐から来た人々が住まった名残です。
上子島は「かみこしま」と読みますが、「かごしま」とも読むそうで。つまりは九州からも、人を募ったのでしょう。

いやもう、なんも知らんかった。
人を募る、なんて、美辞麗句。実際は、人を狩ったのです。
みんなどれだけ故郷に帰りたかったか。
地名は、祈りです。
またもノスタルジアの波が押し寄せ。

観光案内所「夢創舘」。以前は呉服屋さんだったそう。ちょっと一服、ラムネをいただきました。

なつかしい、奈良の町家です。私の実家も祖母が元気なころは、こういったおもむきをたたえていました。

ちなみに私の祖母は98歳で大往生しました。「村のCIA」と仇名されるほど、まっすぐな背筋と健脚を武器に巷を偵察、新聞の隅から隅まで虫眼鏡で読みつくし、亡くなる半年前まで日々これ情報収集に余念のない、気力にも体力にも恵まれた祖母でした。

古都、奈良に生まれ、奈良に生きる女は、みんなけっこう芯が強い、です。
ちなみに私、隔世遺伝の孫娘、です。

夢創舘の裏の蔵は、「くすり資料館」。
推古天皇の御世、高取の地は薬猟(くすりがり)の地として開かれました。

蔵の中の人形は、案山子、です。10月から高取城下町では、案山子祭りが催されるそうです。

置き薬といえば富山でしょうが、大和の置き薬も有名です。高取町はいまも「薬の町」です。

礼の辻。対角のおもむきある囲い、復元された高取城松の門。

松の門の囲いのなかは、とっても広い児童公園。

植村家長屋門。高取藩の筆頭家老のお屋敷です。私有地、現在も植村家の方々が居住中。

なまこ壁。漆喰に瓦を埋め込む、うつくしい造りです。
訪ねてよかったと思える、武家屋敷の粋。

山の頂の高取城跡までは、山登りの仕度でないと無理なので、今日は見送りました。

狐の嫁入り、晴天に小雨。
何ものにもあまりデジャヴを感じたことのない私が、この日ばかりは、なつかしくてなつかしくて、胸がいっぱいになりました。

徳川の歴史にも武家の政権にも、さほど興味のない私ですが、この高取城下町には、郷愁をいだかずにはいられませんでした。

Nostalgia ⒸAndrei Tarkovsky

タルコフスキーの最高傑作の映画、思い出しました。

自由のために捨てた故郷、帰れば裏切り者として殺される。
それでも、故郷で死ぬことを選んだ詩人。

ここで生まれたわけではない私が、ここに帰ってこれた気がしたのは、太古、故郷からひきはがされた人々の、蛍のように飛び交う無数のたましいに、触れたからなのでしょうか。