かたたがえ

2018.10.8 いしきりさん ―石切劔箭(つるぎや)神社―

2018年10月8日、我が家からは生駒山をまたいですぐ、東大阪市の石切劒箭神社、通称「いしきりさん」へお参りしました。

近鉄奈良線、石切駅の北口、さらに北へ北へと門前町を下っていきます。
この「くだる」という過程が、「異界」へ渡る行為そのもので、どきどきします。
不思議と、ベルガモやシエナやウルビーノなど、イタリアの歴史ある坂の多い町に似ていると思いました。

占いの町、いしきりさん。「辻占(つじうら)」が現実のもの。
この雰囲気は、香港や台湾に近いかな。

私がちいさいころ、30年ほど前は、いしきりさんの長い長い門前町はそれこそ「魔界」の風格にありました。
Deep大阪、Chaos大阪、もっともっと、おどろおどろしていました。

ひさびさに訪ねてみたら、観光地として世に知れて、だいぶ洗練されています。
それでも、初めて訪れる方には、きょーれつ、かと。

いしきりさんの本殿。ここは物部氏の神社です。

いしきりさんは、「でんぼ」つまり「できもの」封じの神様です。
いぼやおできは無論、麻疹や風疹などの感染症、そして、できものの最たる「癌」、それらの治癒を願い、毎日みなさん御百度参りをされています。

物部氏は大和朝廷の軍事を担う一族。闘う強力な産土神として、いまもなお、人びとの切なる思いを受け止めてくださっています。

私も7歳のとき風疹に罹り、祖母が私の衣類をいしきりさんでご祈祷していただき、それを病床の私に着せてくれました。
おかげさまで私は痕も残らず、まもなく恢復しました。

いしきりさん、あのとき助けていただいて、ほんとうにありがとうございました。

ご神木の大楠。樹齢500年。楠は安心感を与える木です。
ここ、東大阪、河内、もちろん楠木一党の領分です。
楠木って、これまた、いい名前です。

先にお参りをしてから、おなかを満たすのが礼儀。
ここ「梅月堂」のみたらし団子、最高においしいのです!
このお店目当てに石切へ来る方も、たくさんいます。

むかしむかしから門前町でお商売されている方々は、ほんとうに客あしらいが上手。店の道向かいの休憩所でみたらし団子を食べさせてくださいます。お茶もサービスしてくださるのです。

まだおなかがいっぱいにならない、というわけで、「つけもの茶屋」へ。
複数のブースがつらなる、はやりの飲食スペース形態です。

いしきりさんの門前町にはたくさんの食堂がありますが、いちげんさんには入りづらいRetrospectiveかつKitschな威厳あり。
ですが、この「つけもの茶屋」、開放的で、なによりメニューが安価。そして、さすが大阪、何食べてもおいしかったです。

この日は電車で来たので、主人が昼からいい気になってビールを注文。おつまみの「大阪てっちりせんべい」、これ、すーごくおいしかったです。大阪土産にもってこいかも。

初宮や、ちょっと早めの七五三に、かわいいこどもたちが家族とお参りしていました。

晴れ着の赤ちゃんを抱っこした、きちんと黒い礼服を着た若くてきれいなお母さんが、とってもとっても明るく元気溌剌と笑い、ご主人に「そんな笑わんでええ!」と叱られながら写真を撮られていたのが、なんともほほえましかったです。

大阪は、ほんとうに、おもしろい。元気を与えてくれる町です。
汚い、がさつ、それも真実ですが、もうここしかない、そんなぎりぎりの人たちを「しゃあないな」の一言で匿って受け容れてくれるのが、大阪の町です。

大阪は、人の砦、です。

私は、慈愛に満ち満ちた大阪が、大好きです。