幻燈

人生には、全てをなくしても、 それに値するような何かがあるんじゃないだろうか。 ―映画『風とライオン』―

息子はいつも懇談で担任の先生から「誰とでも大丈夫、誰とでも分け隔てなく接する、Rくんの素晴らしいところです」とお褒めいただいていて、ああもう保育園からずっと同じこと言われてきたな、と既視感に浸り続ける春の常。

人間を含む生きとし生けるものは、安定した存在に惹かれます。
私は実のところ、不特定多数に好かれるなんて気持ち悪くて御免ですが(すまぬ息子)。
しかし日々チューニング、調律は必要です。

息子にはとっくの昔に身長まで抜かされ、はるばる見上げる立場になってしまいました。

すがすがしい負けも、あるのです。

The Wind and the Lion ©John Milius

貴殿は風。余はライオン。

導いてくれる先達は、敵かもしれない。だが、貴い敵だ。

人生には、全てをなくしても、 それに値するような何かがあるんじゃないだろうか。

アメリカ大統領セオドア・ルーズヴェルトに真っ向勝負を挑んだ沙漠の王者ライズリ。私の拙い映画鑑賞史上、最もすがすがしい敗北者を描いた作品が『風とライオン』。

尊厳そのものの威風堂々たるライオンはもちろん、目的のためになら手段を選ばない風も、私は好き。

また会おう。風に乗る金の雲になってな。

この映画をお好きな方は、私と同じ景色を観れる方かもしれません。