2022年10月16日、奈良市内へお出かけ。奈良蔦屋書店、第74回正倉院展のパネル展示。ああもうそんな季節なのか。
今日のランチは、学園前の中国西安料理の王楽園さん。始皇帝も食べていたと謂われるビャンビャン麺がお目当て。
王楽園さんが入っている近鉄学園前駅と直結のモールの「パラディ」は昔からの行きつけですが、王楽園さんに入るのは初めて。
さて、お店のなかへ一歩踏み出すと、いちげんさんには敷居の高い中国大陸の風が吹く雰囲気に圧倒!
お客さんが全員、中国人に見える!
「ビャンって、画数が58もあるんだよ」
息子は最初は緊張していましたが、すぐにお店の空気に慣れ、ビャンの漢字の説明をしてくれました。
で、来ました、ビャンビャン麺。一口食べるなり、鼻に抜ける花椒(ホアジョア)、中華のスパイスにノックアウト!
シルクロードの出発地、陝西省西安の地に降り立ったよう! ここが奈良市であることを忘れる、現地の味、そのもの!
これは旨いわー!!
息子は牛肉麺(ニューローメン)を注文。鶏絲麺(ジースーメン)と点心も注文。
「めっちゃ旨い! また来たい!」と息子、次の予約を入れそうな勢いで麺をかきこんでいました。
「鶏カラと焼売が劇的に旨い」と主人。デザートの杏仁豆腐は私がこれまで食べてきたなかで、ダントツ1位! 何しろ杏仁豆腐、あまりのおいしさに写真に撮るのを忘れましたので。
心地良い汗が噴き出し、香辛料がたっぷりの西安料理は再訪を誓わされて当然のおいしさ。
店員さんたちも感じの良い人ばかりで、こんな身近に青い鳥は飛んでいるのだなと再認識されました。
私たちのあとにお店に来られた方々、いちげんさんはやはりギョッとされて、先客の我々を凝視されました。
ああ、お客はみんな現地人に見えるんだ、私がここに入店したときと同じように。
リトル西安、奈良学園前に在り。
長安有男児
二十心已朽
楞伽推案前
楚辞繋肘後
人生有窮拙
日暮聊飲酒
祗今道已塞
何必須白首長安に男児有り
二十にして心已に朽ちたり
楞伽案前に堆く
楚辞肘後に繋く
人生窮拙有り
日暮聊か酒を飲む
祗だ今道已に塞がり
何ぞ必ずしも白首を須たん長安に一人の男がいて
二十なのに心はすでに朽ちている
机の前には楞伽経が積み重なり
肘の後ろに楚辞を引きずっている
人生にうまくいかないこともあり
日暮れにはいささか酒を飲む
いまやわが道は塞がっており
白髪になるのを待つまでもない李賀「贈陳商(陳商に贈る)」
大好きな詩人、李賀。鬼才とは李賀に端を発する言葉。
李賀こそ、鬼才。
李賀のみ、鬼才。
自発ではなく、生来強制として天涯を見据えさせられる。これが鬼才というものです。
繁栄のなかの繫栄の長安に在る、だからこその、絶望。
これほど長安を端的に象った詩はない。
これほど長安の栄光を闇と対照的にあぶりだした詩はない。
鬼才は謳う。光が影を落としていった、と。
長安。光が影を落としていった。