かたたがえ

2024.3.31 湖の都 覇王の無念

2024年3月31日、3年ぶりに琵琶湖のほとり三井寺へ。
春まだ早き、桜のつぼみは硬いまま。

鐘楼、三井の晩鐘。
近江八景の一つ。

鉄鼠、「比叡山摩訶不思議伝説ウォークスタンプラリー2024」の看板。
あー、比叡山、ぜんぜん行ってへん。そろそろ行かないと。

京極夏彦さんの『鉄鼠の檻』、思い出しました。あれも「無念」を描いた小説で。
ん? あれも? ああ、三井寺自体が、そもそも。

ねずみの宮と頼豪阿闍梨

観音堂へ上る石段の脇に祀られる十八明神は、本来は伽藍を守護する神ですが、 一般には「ねずみの宮さん」と呼ばれ、人々に親しまれています。

白河院の時、当寺の頼豪阿闍梨という高僧に皇子降誕を祈誓するよう勅命が下りました。 まもなく祈祷の験あって皇子が誕生し、その賞として当寺念願の戒壇道場建立の勅許を得ました。

ところが、比叡山の横暴な強訴により勅許が取り消されてしまい、 これを怒った頼豪は、二十一日間の護摩をたき壇上に果ててしまいました。 その強念が八万四千のねずみとなって比叡山へ押し寄せ、堂塔や仏像経巻を喰い荒らしたと 『太平記』は伝えています。

この社は、この時のねずみの霊を祀っているために北の比叡山の方向を向いて建っているとも 伝えられています。

「三井寺について:伝説」三井寺ホームページ

開門してまだ1時間ほどで、桜は開花前、それでも観光客は少なくない。コロナ禍、明けたんだなあ。

お昼から絶対混むね、観光バスのツーリストが訪れ始めた。

閼伽井屋、三井の霊泉、3年前と変わらずふつふつと水が湧いている。

このささやかな泉が、この悲劇的な湖の都の始まりなのだと思うと、言葉もない。

息子「弁慶は、立ったまま死んだんだよね」
私「鑑真さんは、座ったまま亡くなられたよ」

観音堂書院の鐘楼で鐘撞き。ストレスが吹っ飛ぶ。
小さい鐘なので、幼児でも年配でも力を入れずに撞けます。

観音堂書院の玄関、素晴らしい枝垂桜の盆栽。

残念ながら本日の観桜はこの一鉢だけでした。

観月舞台。ああ、惜しいなあ、桜が満開だと、さぞお見事だったことでしょう。

桜の時期は、1組6名まで5分間2500円で貸し切り拝観ができるそうです。

観音堂、奥の間に入れるとは知りませんでした。
私たち3人しかそれに気づいていなかったのか貸し切り状態で、まったり。

琵琶湖を見下ろすように建てられた観音堂。
もちろんここに納められる観音は十一面観音、水の女神の本地垂迹ゆえ。

わー、団体客が押し寄せてきた。そら、こんな良いところ、来ないわけないよな。

展望台にも海外からの観光客が少なからず。しみじみ円安を思い知る始末。

3年前にも訪れた観光レストラン風月。
お味は変わらず確かでした。
しかし、コロナ禍も明けた今は商売っ気も復興し、そそられる魅力はなくなった気もしました。

3年ひとむかし、なのでしょう。メニューの値段も上がり、三井寺弁慶釣鐘饅頭のお通しもなくなっていました。何より、レストランと土産物屋と同じ敷地内にあった三井寺力餅の実演販売の店舗が撤退していたのは、残念の一言。

しかし、3年程度経とうが変わらないのは、三井寺の地下に湛えられた命の水と、覇王の無念。

そう、無念。