かたたがえ

2023.8.4~6 学会 ―東京神田神保町―

8月4日から8月6日まで、東京出張。
私は大阪の医学部の教授秘書で、二つの学会の事務局も兼任しています。そのうちの一つの学会の学術集会が、2023年度は東京神田神保町で開催されました。
土日の学術集会の前日は各委員会と役員会が開催され、このために金曜日から東京へ向かうのです。

近鉄大和西大寺駅。ここから特急に乗って、マイタウン奈良から京都へ。

近鉄京都駅からJR京都駅の東海道新幹線まで、めちゃくちゃ簡単に乗り換えられます。

三上山、近江富士。しばし関西にお別れ。

熱海。大島と初島。大島が見えるって珍しいそう。

JR東京駅から地下鉄への乗り換え、駅員さんに訊かなかったら無理!  駅員さんがどなたも親切で助かりました。

東京駅は、私には梅田駅が肥大化したようなものです。ええいッ、奈良県民には東京も大阪も人が多すぎる! 特に東京駅!
おかげで丸ノ内線、半蔵門線、写真を撮る暇も隙も気力もなし。

神保町駅9番出口から徒歩1分、私の宿泊先、学士会館。東京大学発祥の地。1928年の昭和初期に再建された、国の有形文化財です。
二・二六事件の際には警察本部が置かれたり、戦後はGHQに占領されたり、日本の近代史の舞台にもなりました。
会議室などの公的エリアが、メガヒットドラマ『半沢直樹』の撮影に使用されたことのほうが、有名かも。

学士会館、以前は旧帝大卒業生のみが利用対象者でしたが、今は誰でも宿泊や飲食が可能です。
私は、私の上司の前教授が阪大医学部卒なので、なんだかよくわかりませんが学士会員と同等に扱っていただきました。
ちなみに今回、前教授も私の金魚のフンのように学士会館に宿泊を決めました(自分で予約するのがめんどくさいから)。
この前教授、この学会の理事長で、その分野では世界的権威の医師なのですが、私にはただの賑やかな上司、大阪のおもろいおっちゃんなだけです。

正午に神保町に着いたので、学士会館のフロントにスーツケースを預かってもらって、チェックインまでに古書店街をぶらぶら。
そして、念願の『喫茶さぼうる』へ。

二階の席から一階を眺めて。
京都の左京区あたりの老舗の喫茶店を思い出します。勉強も好き、遊びも好き、って感じ。神田も左京区も両方とも学生街ですね。
私は『カフェ』にはあまり用はなく、『喫茶店』向きなのです。

さぼうるといえば、これ。いちごのフレッシュジュース。
いちごが濃いのに甘くなくて、おいしい!
ああ、来て良かった!

これもさぼうる名物のピザトースト、小サイズ。これも美味だったのですが、先に味わったジュースがおいしすぎたかな。

金曜日で平日だったのでスムーズに座れました。
土曜日にこの通りを眺めると、若い人たちメインの大行列が。この炎暑、何時間待つのか。
平日に訪れておいて正解でした。

近所にこんな喫茶店があれば、毎日は無理でも毎週は通うのに。
神保町住まいの方々、うらやま、です。

古書店街、私が一番かっこいいと思った外観。

矢口書店さんの側面。かっこよ!

逆説的に、古書店はセンスがないとダメだと思います。

一番親しみやすかった本屋さんは、新刊販売書店で、1万冊の絵本とカフェ60席の『ブックハウスカフェ』。こどもの本の専門店ですが、お客はおとなばっかりでした。

もちろん、お子さんもいました。こんな良い環境で育つなんて、これもまた、うらやま、です。

さて14時、チェックインの時間。ただいま学士会館。
ここらへん人混みもなく、頗る付きの好環境です。

私の部屋。コンフォートシングル。私好みのシンプルかつクラシカルなインテリア。

天井が高いから広く見えます。国家を担うエリートのために重厚に造られた建物だとよくわかります。

学士会館の客室の机はどの部屋のものも大きく頑丈だそう。勉強や仕事のために、です。
それこそ東京で受験に挑む高校生のための連泊プランもあるのです。

とても静かです。壁が厚いのでしょう。
目を閉じると、軍靴の乾いた音が鳴り響いてきそう。

宿泊棟の談話室。英国のエドワード様式みたい、瀟洒なのに無駄がない。
学士会館の設えは、落ち着き払って上品このうえないのですが、甘えを寄せ付けない強靭な精神が、先ず漲っています。

私のなかの「男気」が刺激されます。私にとって「男気」とは、「退路を断つ」に等しい。

さあ、夕方から各委員会と役員会が始まる。日本全国から斯界の権威が召集される。私も答弁に立つ。
まさに、闘い。

闘い、勝った勝った!
一晩明けて、土曜日。朝食は宿泊費込み。和食か洋食か選べます。私、今日は和食にしました。
学士会館、食事が美味しい!

学術集会は、開会の辞に参加した後は時間が空くので、会場から学士会館へ帰り、その日に予定されていたペルシア語講座の進級試験に挑みました。オンライン受験です。「今日は東京から参加します」とZoomで顔出しの筆記試験、写メで答案をGoogleDriveへ時間内に送信。

学士会館の客室の机は本当に書き物に使いやすい。
ここで受験できて良かった。勉強でも政治でも戦争でも命がけで闘った先人たちに、「頑張れ、負けるな」と、背を押されたようで。

金曜日の役員会の後は会長招宴と二次会、奢ってもらったので懐は痛みませんが、気疲れが半端ない。
土曜日の夜もお誘いがありましたが断り、ひとりで学士会館の寿司割烹『二色(にしき)』へ。宿泊客限定コースです。
日当もいただけますし、ボーナスも入るし、少しは自分へご褒美を。

さて、奥の落ち着く予約席に進められ、すもも酒のソーダ割りを注文、先付のジュレ、祝杯です。

前菜の籠盛り。素材が新鮮、素晴らしい! 私、東京ってまともに滞在したことなかったと不意に気づき。これが「江戸前」なんだと、感激。

お造り。今まで食べてきた刺身で一番おいしかった! マジで!
私、鮪がそんなに好きじゃない、でもここの鮪、何? こんな滑らかな舌触りの鮪、食べたことない。
東京って、すごいわ。

冷やし煮物。ああすっきりして、うまい。黄色のトマト、絶品。

あまり飲めませんが、今日はとても良い気分。すもも酒を空けて、桃酒のソーダ割りを注文。
これが、甘くなくて濃厚な桃で、おいしいのなんの!
桃づくし、もはや桃源郷の心地。しかし、お酒はコップ2杯が限界。

鮎に糯米を挟んで焼いたもの。お酒に合う合う。
本当においしいものって、ひとりで味わいたい、誰か一緒だと気が散って食に専念できないから。
今夜は最高やわ。

茶碗蒸し。海老に椎茸に生麩、美しい彩り。この飾り付けだけは、真似できそう。

ご飯ものが寿司とは贅沢な!
いや、そもそもこのお店は寿司割烹でした。

〆はマンゴープリン。綺麗な水菓子。最後まで手抜かりがありません。
こちら人気のお店で、味はもちろん、給仕の方々の心配りも一役買っていました。
ランチもされているので、食事は学士会館から出なくても大丈夫です。

多少酔っぱらいましたが、自室のBSテレビで何気にデジタルリマスター版の『ランボー』を観たら、もう、面白すぎて、酔いも吹っ飛びました。スタローン、若い! かっこいい!

日曜日、朝6時からはNHKで『雲霧仁左衛門』を観ます。私の大河ドラマは、これです。
人間や人生や宿命のむごさ、だからこそ浮かぶ泥中の蓮の美しさ。
これが物語というものではないでしょうか。

今日の雲霧、泣いちゃったよ、朝っぱらから。
良い脚本を与えられたら、役者もみな応えてくれる、音楽も美術も何もかも。
そして、観る者も。

さて、今朝は洋食。玉子料理はオムレツにしました。

9時にチェックアウトして、総会のPowerPointスライドを確認したら、会場から駅へ向かい、帰路に着きます。
楽しい、充実した3日間でした。

主人と息子におみやげ。学士会館のトートバッグとフィナンシェ、ブックハウスカフェの猫手提げ。

ほぼ地元ですがJR京都駅でも、おみやげゲット。
亀屋清永の餢飳(ぶと)と清浄歓喜団、これら奈良時代の遣唐使由来の唐菓子。家族全員が好物の宇治の茶団子。鳥獣戯画の夏らしいアクアフルーティーのお香。柴犬モチーフのガーゼハンカチ。

やっぱり関西に帰ると深く息が吸えます。
関西人は、作家の田辺聖子さんがいみじくも仰っていましたが、「関西中華思想」が備わっているような。
まあね、兵庫、大阪、和歌山、奈良、京都、滋賀、どこも目鼻立ちがくっきりと個性豊かで楽しいもの。

しかし、「みやこ」の現役ぶりに触れるは一興でした。

これが私の、夏の陣。