かたたがえ

2018.3.21 さようならプラネタリウム ―当尾の里 加茂プラネタリウム館―

2018年3月21日、暦の上では春なのにこの冷たい雨と風。空も泣いているのでしょうか。この3月末で25年の幕を引いて閉館される京都府木津川市立加茂プラネタリウム館、それを惜しんで。
プラネタリウ館に隣接されたこの山の家の広場で、昨年2017年の夏休みのひと晩、原っぱで雑魚寝しながら流星群を待ち、合間に天体望遠鏡で土星の輪を覗きました。6歳だった息子にも、すばらしい想い出となったそうです。

有名な古刹浄瑠璃寺の麓にある加茂プラネタリウム館。祝日の今日ですが主人が急遽仕事で、いつもなら車で30分ほどの移動、今日は私と息子とふたり、電車とバスを乗り継いで、なんと2時間近くもかかってしまいました。「何があっても行く」、息子の鉄の意志ゆえ。
実は私は昨日から調子が悪く、ふらふら。そのうえこの悪天候、疲労で目が落ち窪みました。
しかしなんとか辿りつき、ひと息。

このプラネタリウムは息子が3歳のころから定期的に通っていました。木津川市は京都府の最南端で、文化圏は奈良に属すかと思われます。ちょっと不便な場所にあるため、このプラネタリウムは混雑することなく、それを好んで通い詰めていたのです。しかし、経営を考慮すると……そして、閉館。
さみしいです、子ども向けのイベント、とても上質なものだったのです。スピカ天体望遠鏡も、ここのワークショップで作ったね。今日が最後のキッズプラネタリウム、龍神さまの申し子で雨男の息子、そりゃ君、櫛風沐雨もなんのそのだね。

蠍座と射手座。ぐるり、黄道12星座。ちなみに息子は乙女座です。

宇宙服、1着10億円也。宇宙飛行士、私には萩尾望都先生の傑作SF『11人いる!』で、想像終了。

定員50名ほぼ満員。このプラネタリウムがこんなに混むのは私にはこれが初めて、そして最後。
何かの終わりを見つめるのは、感無量、です。

真っ暗な空、満天の星、88の星宿、私はちいさいころ天文学者になりたかった、そんな遠い記憶が呼び戻されました。星を見ていると、瑣末な苦悩がふっとび、謙虚になれました。より一層、自由に。
息子がプラネタリウムを、星を、宇宙を、地球を、好んでくれて、それだけで母はしあわせです。

プラネタリウム鑑賞後、段ボールのプラネタリウム「アストロボックス」を工作しました。手前、覗き穴。

プラネタリウムの星座、息子は自分の誕生星座の乙女座を選びました。穴を覗くと暗闇に赤青黄緑の星が光ります。私も、マスキングテープ職人しました。これで最後のワークショップなので、飾りの資材をたくさん使わせていただけました。それも悲しい。最後の最後まであたたかい施設だったとしみじみ。感謝しかないです。

加茂プラネタリウム館からJR加茂駅まで、浄瑠璃寺と岩船寺をコミュニティバスで巡回しました。お客は、終点間際に年配女性が1人乗車された以外、私と息子だけで、ほぼ貸切でした。
山道をくねくね、この道なりは初めてで、ああバスって目線が高くていいなあ、と心底思いました。当尾の里、きちんと辿ってみよう、と。

私はあんまり景色に心が惹かれると、カメラを撮る気が失せます。当尾の山里、桃の花でしょうか、突風にわらわら折れた竹林の合間、早春の花の色がほの白く点描され、この方違えも思いのほか素晴らしかった、胸に染みた、それでいいや、と。

JRで奈良に向かう電車内、信楽のミホミュージアムの広告に、なるほど加茂は滋賀の文化圏でもあるな、と、しみじみ。ここらへん、お茶どころの文化圏です。

JR奈良駅到着。あー、ほっとします。帰ってきたよ、奈良県に。

おなかはぺこぺこですが、体調不良で、なんでもは食べられません。お、天極堂、しかも空いてる! 私は葛料理が大好き、しかも葛は、しんどいときこそもってこいの優しさです。息子は葛カレー、私は花月定食。葛とろろごはんが最高においしかった。

花月定食には葛蕨餅がついています。できたてほやほや、絶品。
天極堂の奈良本店はいつも満員なので、敢えては行きません。飛鳥の山田寺跡近くの天極堂テラスにはよく行きます。ここJR奈良支店も穴場かもしれません。

私は幼児のころから和菓子や精進料理や薬草料理が好きで、それは奈良県の葛城地方の田舎の出であることが大きいと思われます。あと、私はお祖母ちゃん子でした。
お祖母ちゃん、浄瑠璃寺、つれていってあげたかったな。なつかしい気持ちで今日の方違えは終わりました。

さようならプラネタリウム、楽しい夢を見させてくれて、ありがとう。