ならだより

2021.9.19 壱師の花 蝋燭のように音もなく燃える炎

2021年9月19日、平群の本屋さんに立ち寄ってから天理へ向かうまでに、斑鳩、法隆寺門前を横切りました。
10代の頃は実家から法隆寺まで10㎞、ゆっくり1時間、自転車で走りました。
電車の便の悪い奈良県の子どもは、30㎞程度の道程なら余裕で自転車を漕ぎます。

大和川沿いの堤防を、西から東へ。地元民は混まない裏道を通ります。細い堤防の道、対向しにくいので、運転の上手い方限定です。

天理の農家カフェ、けやきさん。この日は息子の11回目の誕生日。季節のスペシャルランチでお祝い。

・大和茄子のチーズ焼き
・バターナッツ南瓜とレーズンの塩麹ロースト
・空心菜の中華炒め
・金時草と素麺南瓜の酢の物
・いろいろ野菜のハンバーグ風
・つるむらさきのナムル
・コリンキーとビーツのサラダ
・黒米ごはん
・モロヘイヤのお味噌汁

うっかりして、予約を入れるのを当日まで忘れていました。
しかし、けやきさん、私の名前を覚えていてくださって、先約でいっぱいいっぱいのところをわざわざ一席設けてくださいました。

デザートはレモンシフォンケーキと栗のタルト。

前日までの予約なら誕生日プレートもOKでしたが、仕方ありません。

けやきさんのお食事デッキはビニールハウスの屋根なので、陽射しが良くなると覿面に暑くなります。
ツクツクボウシが鳴きだし、これはかき氷を食べるべきだと決断。

苺のかき氷。自家製苺ジャムのソース、おいしい。苺そのものも、自家製。最近のかき氷機はどれも高性能、氷が薄くて口当たりが最高です。

かき氷はおなかを壊すので苦手ですが、こんな良質なかき氷なら、それも暑いデッキで食べるなら、体温が下がって良い塩梅です。
それでも、家族3人、かき氷1つで充分。

けやきさん、もはや1年に1回の訪れ、なのに覚えていてくださって、ありがたいお店です。

当然、石上神宮へお参り。拝殿、彩色塗替工事中でした。
えー! 息子、でっか! 11歳男子、もう155㎝です。私、追い抜かれるのもそのうち。

石上神宮の北、大念寺、ここらあたり彼岸花の名所。天気が良過ぎて、草臥れていますが。

天理環状線、駐車場までの道沿い、目を奪われる緋色の群れ。

美しい。これは、お見事。

路邊壹師花灼然人皆知我戀孋

道の辺の壱師の花のいちしろく人皆知りぬわが恋妻は

路のほとりの壱師の花のようにはっきりと人はみんな知ってしまった私の恋しい妻を

柿本人麻呂『万葉集』(11-2480)

壱師の花とは、彼岸花と考えられます。『万葉集』4500首もの歌を数えるなか、唯一詠まれた彼岸花の歌です。

人麻呂の妻がどれほど的皪と鮮やかで、且つ、寡黙で神秘的な女性だったのか、言わずもがなで伝わります。

壱師の花、彼岸花、曼珠沙華は余計な枝や葉もなく、ただ花弁のみ。
蝋燭のように音もなく燃える炎です。