2020年10月24日、第72回正倉院展、開幕。
17時からの観覧予約、夕食のブイヤベースを作ったのが失敗、近鉄奈良駅着が16時45分!
息子と小走りで奈良博へ向かい、着いたのは16時55分!
規約で、観覧時間の30分前からしか待つことはできません。
キャンパスメンバーの受付を済ませて列の最後尾に並んだものの、へ? 嘘やろ? 5分後には館内へ入れました。
これは、30分前から待つ必要なく、むしろぎりぎり到着でベストでは?
そんなこんなですごくゆったりと観覧が叶い、こんなに落ち着いた正倉院展、初めてで、それも皮肉だと、嬉しさと悔しさが綯交ぜになり、寧楽の都の夕間暮れ、私は歴史に残る疫病の時代に生きている事実に、瞑目しました。
奈良国立博物館の庭園、八窓庵。正倉院展観覧後の奈良の夜空。
今日の月はおかしなもので、息子をいつもの息子と異なる、私にそっくりな顔だちで写しました。
昨年5月、奈良博のお茶会の後、この庭園で遊んだのです。あの薫風吹き渡るころ、こんな疫病の嵐に蹂躙される今など微塵も想像だにせず。
五色龍歯を始めとした薬物、墨絵弾弓や御甲残欠などの武具、『新修本草』の書写を証明する更可請章疏等目録など、今年の正倉院展はあきらかに疫病退散への祈りを籠めた展示だと、観覧者の魂魄に訴えかけるものでした。
薬物や薬学書は当然ですが、武具も魔を討つ道具であるのです。
正倉院展の裏方の方々の、神仏のみならず森羅万象へまで乞い願うような姿勢に、私も感極まりました。
正倉院展は第二次世界大戦後、傷つき果てた日本人の心身を揺り起こすために始まったもの。
私たちが日本人として生まれたことをどうか恥じることのないよう、私たちにはこれだけの文化を守って受け継いだ威力がある、まごころがある、それをどうか忘れないでほしい、そんな切なる想いで始まったもの。
いざ魔を討ち破らん!
正倉院の宝物は、日本だけのものではなく、世界のものでもあるのです。
どうか万物に生命のあまねくよう。
戦利品です。今回は展示されなかったのですが、息子のお気に入りの五弦琵琶のマグネット。平螺鈿背円鏡モチーフのものさし。うちは正倉院展のものさしが、息子の机の抽斗に何本もあります。
平螺鈿背円鏡のお茶は、缶の蓋がマグネットになっています。綺麗なマグネット、買って良かった。