ならだより

2018.9.23 白い曼珠沙華

2018年9月23日、少し遅くなった息子の誕生日のお祝いの食事として、天理市の農家レストラン「けやき」さんへ。
「僕おおきくなったね、もう8歳なの! 最初に来たとき、3歳くらいやったね」と、お店の方が目を細めてお出迎え。
「石上神宮で七五三の帰りにも、けやきさんに来ましたね」と私。
「おとなになってもうちに食べに来てな。彼女ができたら、彼女も一緒に来てな」
「うん」と息子。

息子は、ひとたらし、です。いたるところに息子のファンがいます。一言、「険のない子」なので。
どうして私からこんな子が生まれたのか。人類の摩訶不思議、です。

けやきさんのメニュー。

野菜ランチ
・赤万願寺唐辛子の当座煮、金時草おひたし
・素麺南瓜、蔓紫の酢物、コリンキーのサラダ
・空芯菜のオイスターソース炒め、すくな南瓜
・茄子うどん

大和丸茄子のチーズステーキランチ
下記、野菜ランチにプラス
・季節の焼き野菜
・大和丸茄子のチーズステーキ

けやき健康ランチ
下記、野菜ランチにプラス
・豚ヘレのピカタ
・青大豆の煮豆
・季節の蒸し野菜

息子は野菜ランチ。私は大和丸茄子のチーズステーキランチ。主人はけやき健康ランチ。
丸茄子のステーキ、絶品!
私個人のおすすめは、野菜中心でボリュームありの、大和丸茄子のチーズステーキランチです。

主人は、お肉食べたいな、と。男の人は、健康ランチがベストかな。
どのランチも、おいしいお味噌汁とご飯つきです。おなかいっぱいになりますが、ほぼほぼ野菜なので胃もたれなんか無し。

甘いものは別腹。デザートにはブルーベリーのタルトを。付け合わせの葡萄も、けやきさんの農園産。
大事に育てられたけれど、過保護ではない、特権にはない、すこやかな野菜と果物です。

けやきさん、駅からは離れていますが、古代豪族物部氏の産土、山の辺の道を歩くときなど、ほんとうにおすすめの御食事処です。

食後は腹ごなしの散策目的に、けやきさんのすぐ近く、石上神宮へ。
拝殿を背景に、息子が持っているものは、鶏の土人形に入ったおみくじ。
良かったね、大吉でした。

石上神宮には、神様のおつかいとして鶏が放し飼いにされています。
人慣れした鶏ばかりですが、たまに襲いかかってきます。
鶏の気分次第、要は運です。

引き攣る笑顔の息子。なぜなら息子は鶏が苦手。これ以上は近づけません。
息子はよちよち歩きの幼児のころから、ここの鶏に細心の注意を払っています。

息子の初宮は「みわさん」、大和一の宮である大神神社でお祈りしていただきましたが、七五三はここ石上神宮へお参りさせていただきました。

どちらもすばらしい大社です。しかし、みわさんは人がたくさん訪れ、なかなか落ち着かないのも事実。
石上神宮は人でひしめくことはあまりなく、空気が冴えわたって、閑(しずか)、です。

3年前、七五三で訪れた際、うちの息子には、貸衣装ですが、一応、紋付袴を着付けていました。御祈祷も、拝殿の上で、授かりました。

「なかでお祈りできなくてごめんね」
「お母さんがいるから、いい」
私たちが拝殿から降りた後、お参りに来た7歳の女の子とお母さんは平服で、それでもお母さんが娘さんのために一生懸命、拝殿に向かってお祈りしている横顔に、私は胸をうたれました。

幸せな娘さんです。
あんなにお母さんに大切に想われて。
それはきっと娘さん自身、いちばんよくわかっていることでしょう。

大和の秋を彩る彼岸花、曼珠沙華、赤ではなく白いものもあり、あの母娘は、数少なく寄り添う白い曼珠沙華の化身のようでした。

それから、石上神宮にお参りするたび私が脳裏に思い描くのは、あの、か細くも深く根を生やす、白い花のような母娘の後ろ姿なのです。

石上振之早田乎雖不秀繩谷延与守乍将居

石上布留の早稲田を秀でずとも縄だに延へよ守りつつ居らむ

石上の布留の早稲田は、まだ穂が出ていなくても縄だけでも張ってください。穂が実るまで守り育てましょう。

『万葉集』7-1353