2021年の年末のこと、古代ユーラシアの金工品についてきちんと調べたくなり、ふと、「そういや奈良大学の図書館って、大学図書館ランキング1位獲ったな」と思い出し、ググってみましたところ、このたび日本考古学協会から6万冊を超える寄贈図書を受入したと。
え、じゃあ、まさかまさか、いつも大阪府立図書館や奈良県立図書館まで足を運んで借りていた資料も奈良大学で揃うかも。
ドンピシャ! completeで揃いました!
奈良大学図書館のrepositoryからネット予約をしたのが12月24日の金曜日。重たい図録がたくさんあり、貸出上限の10冊、送付してもらうことに。図書館に電話でも確認、夕方だったので明日25日土曜日での送付手配を返答いただけました。で、10冊もの本が我が家に着いたのは、翌日26日の日曜日。最速です。すばらしい。
着払い送料1390円かかりましたが、こんなに重い本10冊、奈良大学まで出向いて借りる時間と手間を差し引けば、evenです。
返却は、車で奈良大学図書館へ向かうことにします。
直に図書館や書店を逍遙して目的以外の本に魅了されるTreasure huntも好きですが、わき目も振らずに目的の本だけを司書さんに用意してもらう予約送本システムの優雅さ、王侯貴族気分です。
奈良大学図書館は、私の知的財産の金脈です。
セルギイ・チャイコフスキー著,林俊雄訳『ウクライナの至宝展 スキタイ黄金美術の煌めき』
九州国立博物館, 東京国立博物館, 産経新聞社編『黄金のアフガニスタン 守りぬかれたシルクロードの秘宝 』
奈良国立博物館編『黄金の国・新羅 王陵の至宝』
金宇大『金工品から読む古代朝鮮と倭 新しい地域関係史へ』
河田貞『日本の美術445 黄金細工と金銅装 三国時代の朝鮮半島と倭国(日本)』
並河萬里写真・林良一解説『ペルシアの遺宝第2巻「金・銀・銅・宝石」』
増田義郎『黄金の世界史』
高田貫太『アクセサリーの考古学 倭と古代朝鮮の交渉史』
ジリアン・クラーク著,足立広明訳『古代末期のローマ帝国 多文化の織りなす世界』
ピーター・ブラウン著,戸田聡訳『貧者を愛する者 古代末期におけるキリスト教的慈善の誕生』
上記、出版社と出版年は省きましたが、古代ユーラシアの金工品について8冊、西洋古代末期史について2冊。
2000年前の金工品の完成度。古代の人々の黄金へかける情熱。
金製の遺物と金銅製の遺物とでは、その永続性の差が歴然。
金は、朽ちない、腐らない、ほぼ永遠に光り輝き続ける、不死と再生の象徴。
バクトリア大月氏に縁有るとも謂われるアフガニスタンのティリヤ・テペ遺跡の古墳群から出土した金冠と、本邦の藤ノ木古墳出土の金銅冠。
紀元前1世紀の冠と6世紀後半の冠、姉妹のように似ているのです。
鳥と聖樹と鹿の角、騎馬遊牧民のトーテム、ユーラシア大陸から海を渡り日本へ。
ヘレニズムの王の墓、5人の妃をおそらく殉死させたもの。6号墓に葬られた推定二十歳の女はおそらく正妃で、最も美麗な金工品でその全身を鏤め、鳥と聖樹のそれは見事な細工の金冠をその頭(こうべ)に戴いていました。
王のみが天へ昇れる、だから王が亡くなったときが王以外の者も天へ昇れる唯一の好機。その騎馬遊牧民の民族意識から、5人の妃も当然のように王に殉じて天へ召されたのでしょう。
30代で亡くなった王は、身長180㎝の長身の男性でした。
妃は10代から40代まで幅広く、最も若い妃は妃になる前の少女だった可能性もあるそうです。
否、正妃の身なりが最も豪華絢爛であったことから、もしかしたら、王は彼女であったかもしれないと睨むのは私だけでしょうか。
大月氏国には女王がいた、それは張騫の証言や金印など遺物からも確かなことであり、その文化を受け継ぐこの地で、殉死させられたのは女王の夫や母や妹たちであったと推察するのもおかしくない、と。
いずれも老いてはいない男女、その生き急いだような命が黄金の冠として、極東の島国の王へ引き継がれた。
人の命は儚いようで、しかしその想いは例えれば、黄金のしたたかさ。
草原と大海原が、金の道で繋がる。永遠は、文化によって表現される。
GoldenRoadつまり黄金の思想をつなぐ道です。