波斯へ

傷ついたのは、生きたから。

タイトルは作家高見順の言葉です。
シルクロード学を勉強していて、不意に思いかえした言葉です。

みなさまもうとっくにお気づきでしょうが、私はイラン・ペルシア文化が大好きです。

大月氏の後継であるクシャーン朝がイラン系遊牧民エフタルに破れ、中央アジアは突厥やウイグルなどテュルク系遊牧民によってトルコ化されます。
本家ペルシア帝国サーサーン朝は、アラブに呑みこまれました。

月氏について調べていたとき、どうして匈奴はここまで月氏を追うのか? もともと大勢力にあった月氏への積年の恨み? いや、そんな単純なものとも思えない、などなど考えあぐねていました。


なぜ奪うのか?
……欲しいから。

なぜ欲しいのか?
……好きだから。

私は射手座の生まれです。半人半馬のケンタウロスです。
半分ケダモノですから、欲しいものしか欲しくない、好きなものしか目に入らない、それ以外はどうでもいい、嫌いですらない、憎悪など無縁、ただ追いかけていたいだけ、あこがれを。
なんとなく、遊牧民の気持ちに寄り添えるのです。


グレコ・バクトリア王国の流れを享けた、クシャーン朝ガンダーラ美術の秀麗さ。
月氏と大月氏の遠い日の光。
その果ては、アレクサンドロス大王が遺した光、そして影。

なんてうつくしい。
うっとりします。
傷だらけで砂に埋もれて、それでも、いや、それだからこそ、彼らが生きたあかしです。

2016年の春、南都西大寺境内での手作り市「薫風祭」で購入した、ビーズ作家esteemさんのネックレス。
ひとめぼれでした。
ペルシアの水の女神アナーヒターを彷彿とさせる、清浄さです。