workshopならだより

20227.31 夏の美しく儚い夢 ―中将姫と當麻曼荼羅 祈りが紡ぐ物語―

2022年7月31日、貞享本當麻曼荼羅修理完成記念特別展「中将姫と當麻曼荼羅 祈りが紡ぐ物語」を観に、奈良国立博物館へ。

第七波の影響か、奈良の街は夏休みなのに人足は疎ら。

當麻曼荼羅の化生童子をこんなゆるキャラに。息子も、化生童子に!

當麻寺らしい、中将姫らしい、夏らしいワークショップ、藕糸(ぐうし)つまり蓮糸を用いての手織り体験に参加。

ワークショップ開始の10時半までに特別展を拝観しました。
私の実家は當麻寺に近いので、いつもとは異なる様相の寺宝に胸躍りました。

中将姫が実在したかどうか、そこらあたりからして朧気なのですが、中将姫とは弱者が自己投影するための「夢の女」なのかもしれません。

朝に咲き夕べに萎む蓮の花のように、夏の美しく儚い夢なのだと、當麻曼荼羅を編んだ女の物語は。

特別展拝観の後、ミュージアムショップで化生童子のマグネットと中将姫のトートバッグを購入。
今回の展覧会の記念グッズ、かわいいものが多かったです。

10時30分、ワークショップ開始。
150名以上の参加希望者から抽選で選ばれたのです。
たいへん貴重な体験教室、抽選に漏れた方たちも一目見たいと見学されていて、気が引き締まりました。

元興寺文化財研究所の大橋有佳先生が、唐招提寺からいただいた蓮から糸を繰り出す手順を教えてくださり、豊前小倉織研究会の大和恵子先生が、実際の機織りのレクチャーをしてくださいました。

蓮糸は、蓮の茎から繰り出します。茎の表と裏に、切り口を入れます。

茎をパキッと折って、捩じりながら糸を繰り出します。

茎の長さだけ糸は伸びます。細い細い、蜘蛛の糸のよう。

ゴサマーのように軽やか。これは後で、布に織り込みます。

これは緯糸(よこいと)の藕糸。藕糸つまり蓮糸はとてもとても繊細なので、これは絹糸と縒ったものです。

コースターを織ります。先ずは、色糸のデザイン起こし。木綿の色糸は先生お手製の手紡ぎのもの。
色糸の配置は、息子が請け負ってくれました。

原始機(げんしばた)! やってみたかった! 大感激!

Ⓒ『モノづくりの考古学』

弥生時代の機織り機。憧れでした。
私は手作業が大好きなので、特に染色や機織りは、いつかいつか習いにいきたいと願ってやまない、憧れなのです。

黄色の糸は、予めの止め編み。
経糸(たていと)は麻糸。
櫛のような綜絖(そうこう)は、経糸を上下させる機織り機の心臓部。

だいぶ慣れてきた。とっても楽しい。
息子は色糸を置いてくれます。立派なデザイナーです。

上から3つ目の黄色の色糸に、さきほど繰り出した唐招提寺の蓮糸を絡めました。
なんて楽しいんだろう、ずっとできるわ、これ、

「一番乗りですよ、手際良い」
「でもきちんと編めてらっしゃる」
先生や学芸員さんたちからお褒めいただきました。

原子機は現代に合わせて改良されたものが種類もたくさんあるそうです。

私は黙々と行う作業が好きで、自分でも向いていると思います。
好きなだけ集中できる、それがいいので。

奈良国立博物館さん、いつもいつもありがとうございます。

奈良芸術短期大学講師正垣雅子先生によるラダック仏教寺院壁画の模写。

12時に主人と近鉄奈良駅で合流。
主人に息子を預け、私は奈良芸術短期大学へ。日本画公開講座2022「第2回ラダック地方」の講義を受けに。

西大寺から橿原神宮前まで特急に乗ったので快適でしたが、奈良芸術短期大学までの徒歩が地獄の暑さ!

しかし、講義は相変わらず面白く、ラダックはインドといってもチベット文化圏で、遺物も当然チベット仏教のもの。

シルクロードやヘレニズムの潮流は、奈良の文化にも親和性があるとは私の主観。
反面、チベット仏教は異質だな、と。
それは正垣先生もお認めくださいました。

溶け合うもの、屹立して溶け合わないもの、どちらも仏教の在りようだと。

異質であっても魅力的であることに変わりない。

ハードスケジュールでしたが充実以外の何物でもない、そんな7月最後の午前と午後でした。