2022年4月2日の夕方、奥明日香の自転車旅の後、大和三山耳成山付近の橿原市のゲストハウスへ。
飛鳥は日帰りでも全く大丈夫ですが、息子がどうしても一泊したいと駄々を捏ねたので。
【公式】奈良・大和八木「ゲストハウスはじまり」 大阪・京都・名古屋直通の大和八木駅より徒歩9分、2019年10月オープンのゲストハウスです。1泊2,500円~、飛鳥・橿原 guesthouse-hajimari.jp
30代のオーナーさん、とてもテキパキとされた方で、お若いのに奈良の名所はほぼ踏破されていて、頼りになる。
ゲストハウスに泊まるのは初めてでしたが、水回りや寝具がとっても清潔で、なかなか快適でした。
テレビは共用スペースだけなので、最寄の「スーパー銭湯あすかの湯」の帰りに書店に立ち寄り、軽い読み物程度に買った新書が大当たり。
著者は「NHK特集シルクロード」の取材班団長を務めた方で、12章立ての印象的な西域の挿話をわかりやすく誠実に語られ、シルクロード入門書として最適でした。
就学前にテレビで見たシルクロードの映像。
今を懸命に生きているのだから昔が良かったとは言いたくない。
それでも、西域の映像記録、あんな国と国を跨いだ一大事業、いつかまた期待できるのだろうか。私は楼蘭や敦煌の土を踏めるのか。
藤原京の間近、耳成山のふもと、良書に睡眠を奪われました。
翌4月3日、桜井市の長谷寺へ。
飛鳥も桜井も道が空いていたのは、みな吉野へ行ったからでしょうか。
8時30分の開山と同時に入場。
飛鳥でも思いました、初瀬でも「今が花の盛り」と。
お参り、息子5歳のとき以来。
「なんにも覚えてないから新鮮」
不届き者め。
お見事。
手入れの行き届いた花見となり。
上中下の登廊。
だんだん石段が高くなるのです。
399段。
登りやすい石段です。
どこを見ても花。さすが花の御寺。
朝の空気は清澄で、贅沢。
我が家は慾張りなのです。
本堂。
上弦の魅力、八部咲の桜。
ご本尊にお参り。
ちょうど11枚の10円玉、喜捨。
「11枚の何がすごいの?」と息子。
「十一面観音様なんだよ」と私。
「十一面観音様は杖をお持ち、つまり、旅をなさっている」と私。
「なんで旅をしてるの?」と息子。
「おたくも、なぜ、いま、旅をなさっているの?」
「おらは、この春で、小学6年生になるからです」
「通過儀礼なのです、旅は」
「つうかぎれい?」
「生きるためには、死を知らないとダメなのです」
「わっからへん」
死者の谷なのか、王家の谷なのか。
花爛漫の魂のこもる谷。
四方を山で囲まれた場所。「こもり」は「隠り」で、「く」は場所を示す語。万葉集・記紀で「こもりくの」という表現で、地名「泊瀬(はつせ)」(現在の奈良県桜井市初瀬)にかかる枕詞として用いられており、単独で用いられることはない。「こもりくの泊瀬の山」が、石田王の死に際し丹生王が詠んだ挽歌(3-420)に、石田王が神として祀られている場として登場している。この他にも、挽歌の地として「こもりくの泊瀬」が舞台となっている歌がある。また、柿本人麻呂が詠んだ安騎野遊猟歌(1-45)では、日の皇子である軽皇子(かるのみこ)が、岩が転がっている険しい道の「こもりくの泊瀬の山」を悠々と越え、安騎野において亡き天武天皇を追慕する。人間の力の及ばない神が支配する地として「こもりくの泊瀬」が認識され、その地を経過することで、軽皇子が日の皇子としての絶対的な資格を得たと捉える説もある。こうしたことから「こもりく」は、単に地勢的に隠った場所としてではなく、死者を葬る場所であり、神の支配する領域、霊魂の隠る場所と理解すべきかもしれない。
「こもりく」倉住薫『万葉集神事語辞典』
古代信仰では死は穢れではなかつた。
折口信夫『若水の話』
死は死でなく、生の為の静止期間であつた。
鼠のおみくじと学業御守。どちらも想い出として入手。
御朱印集めは、やめました。数冊あった御朱印帳もすべて、お焚き上げしてもらいました。
これで拝観に集中できる。
すっかり気楽になりました。
塔頭の能満院。ここはゆるかわのおみくじが満載。
しかし息子は首を横に振り。
「おらはもうおみくじは怖い。信貴山でこりごり」との言。
能満院の奥、修行中の柴犬。柴犬好きの主人が見つけました。
おとなしい子でした。
まだ10時半。しかし我々は帰宅の時間。
こもりくはつせ、花の龍宮城。
すばらしい時節。
旅を希望した息子に感謝。
「小学校最後の一年、頑張ります」と息子。
背中の桜も笑って応援してくれているよう。
長谷寺も草餅がおいしい。
お薦めは寶園堂さん。
まっとうな経営をされているので、地元民はここで草餅を買います。
いつ食べてもおいしいな。
あっさりしているから、いくらでも食べられます。
帰宅して、草餅と一緒に、奥明日香さららさんお手製の黒米と赤米のクッキーも食べました。
すでに、懐かしい味がしました。