波斯へ

しかし、張作霖とは……Radicalですね。

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現在のタジキスタンを本拠地としたシルクロードの陰の主役、ソグド人。その研究者として第一人者の森安孝夫先生、阪大名誉教授で中央ユーラシア史の権威です。森安先生のこの著作はもう、とんでもなく面白い! しかし、読んでいて「森安先生、命狙われるのでは?」と危惧するほどRadicalです。
Radicalには急進的や革新的のほかに、根本的や根源的という意味もあり、その側面も森安先生の論理は孕んでいます。
詳細はぜひ、お目通しのほどを。目から鱗が垢のようにぼろぼろこぼれていきますよ。

さても私をふるえあがらせたのは、あとがきの一文でした。

今や歴史学の一環として中国以外のアジアを研究することを大学の制度として保証し、しかも遊牧民族を夷狄視せず客観的に見ることができるのは世界広しといえども日本だけである。
中央ユーラシア・西アジア・東南アジア世界を含む本当にグローバルな世界史を、学問的最高水準を踏まえて叙述できる環境は、もはや日本にしかないのである。

いやもう、喧嘩上等、日本と世界への愛に満ちた言葉です。それは、今現在、奈良大学で西域史を学ぶ、私のような末端までが自論をこねられる自由自在な環境を、ガツンと思い起こさせてくれたのです。
日本こそ、肥沃な大地だったのだと。ああ、好きに勉学できて、ただただ僥倖です。

ペンジケント遺跡 Ⓒドゥシャンベ美術館 タジキスタン

私は小学生のころ、大阪の天王寺界隈へ外出した際、年齢性別国籍不詳の浮浪者から(昭和の天王寺界隈は“魔界”の風格でした)「あんたは張作霖の生まれ変わりや」といきなり言われ、「ちょーさく? レツゴー三匹の?」と言い返した覚えがあります。長作師匠は2018年に亡くなられましたが、当時は当然ご存命でした。
別に、ごくふつうの女の子の容貌だったと思います。それが満州の馬賊あがりの苛烈な軍閥政治家の生まれ変わりって。
そのころ私は10歳そこそこ、張作霖の名前すら分別はついていませんでした。それ以降、古代史だけではなく近代史まで幅広く注意を払って中国に目を向けるようになったのです。

しかし、張作霖とは……Radicalですね。