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憎しみをどこまでも見果てぬ夢に 負の気持ちすら包みこんで物語に ―能楽『敦盛』―

ⒸO-DAN

ブログ友達のとても明るく心優しいジゼルさんが『永遠のジュリエット(それにしても素敵なブログタイトル)』以前に、CandyCandyさんとして紡がれていた『よかったら読んでいってください!』のコメント欄に私が寄せた文章、作家氷室冴子さんについて書いたものの、「ああこれは敦盛だ」、と自分でも思わせる内容で、以下ここへ転用させていただきます。

瓊花

CandyCandyさんご存じでしょうか、氷室先生のシンデレラシリーズ。私は『シンデレラ迷宮』の「シーラカンスの夢」が大好きで。白鳥の湖のオデットとオディールが姉妹で。
妹のオディールはふだんはみそっかすなのですが、姉の婚約披露のPartyで踊るオディールの美しさはすべての観衆を魅了する神がかったものなのです。当然、姉の婚約者もオディールに恋して、姉を捨てた男をオディールは拒否し、男は自ら命を絶つ、それを繰り返しているのです。
誰も、オディールの魅力に打ち勝つほど、オデットを愛していない。
オデットはそれでも恋をし続ける。そして、オディールは踊ることをやめない、男に騙され続ける姉を守るために。
いや、姉を幸福の絶頂で引き裂くために。

美しい母は、姉妹を産んで、父のもとを去った。父は、妻に似た姉娘を愛した。妹は夢見るのです、母のおなかのなかにいたころの、最も幸せだったころの夢、シーラカンスの夢を。
私、小学生でしたが、泣きながら読みました。

氷室冴子さんは、憎しみをどこまでも見果てぬ夢に変えられます。それ、ジャパネスクシリーズの吉野の君もそうですよね。
私は奈良県民なので、吉野はもう赤ん坊のころから通っています。見果てぬ夢が、最も似合う土地だと思います。

CandyCandyさんの想い、あこがれ、見果てぬ夢と同じで、透きとおって美しい。
男性に限らず、人に限らず、何かを好きになることの尊さ、ですね。

CandyCandyさん

瓊花さま💕

懐かしい~😆
きっと、実家の蔵の中(段ボール箱)にあります、「シンデレラ迷宮」💕

もちろん、読みました💕でも今も自宅に寘いてある「なんて素敵にジャパネスク」と違って、ストーリーを今はっきりと思い出せません💦

確かわたし、高校生くらいの時に読み、物語を旅する「りね」という女の子が、わたしたち女子の心の奥に眠っているよな~、みたいなことを思った記憶があります。

また実家に帰って探して読み直してみます‼️

私が、氷室冴子先生を好きなのは、「脇役」が、どの作家さんより素敵だから、です。

脇役の気持ち、瓊花さんのおっしゃるように「恨み」や「悲しみ」までも理解し、寄り添い、負の気持ちすら、包みこんで物語にしてくださる。

もっと長く生きて、たくさんの物語を紡いでいただきたかった。

こうやって、大好きな氷室冴子先生のことを語れる方がいて幸せです。

CandyCandyさん、この方は、皆に平等に暖かく光をそそがれる、誰にも絶対に恥をかかさない、本物の貴婦人です。

太陽におなりなさい。そうすれば誰もがあなたを仰ぎ見るようになるでしょう。

ドストエフスキー『罪と罰』

CandyCandyさんこそ、太陽のような方です。

「敦盛」菊池契月筆、京都市美術館蔵
Ⓒ源平合戦人物伝

おまえ風情に私が名乗るはずもない。
私はおまえには上物、さっさと首を獲って手柄にしろ!

命乞いなどまっぴらと言い放つ『平家物語』の敦盛、数えで16歳。
いやもう、しびれます。
熊谷直実の、実直なまでの優しさも、青葉の笛の風雅を解する鋭敏さも、私の胸を打ちます。

そんな見事なふたりの男を、どうして敵同士のままでおけるものか。
それが世阿弥の本心だったのでは。

お能でも『平家物語』でも、敦盛と直実の醸す瞬きも惜しむ空気感、そこはかとなく男色の香気ただよい、それも人を惹きつけるのだと思います。

性差を超えて、人は人の魅力に平伏す。
それのいったい何がいけないのか。

ワキ(蓮生:熊谷直実)
げにげにこれは理なり。さてさて樵歌牧笛とは

シテ(草刈り男:平敦盛)
草刈の笛木こりの歌の

ワキ(蓮生:熊谷直実)
憂き世を渡る一節を

シテ(草刈り男:平敦盛)
謡うも

ワキ(蓮生:熊谷直実)
舞うも

シテ(草刈り男:平敦盛)
吹くも

シテ・ツレ(草刈り男たち)
遊ぶも

謡うも、舞うも、吹くも、遊ぶも。
世阿弥の畳みかけるbeat感、最高です。

ワキ(蓮生)
日ごろは敵

シテ(敦盛)
今はまた

ワキ(蓮生)
まことに法の

シテ(敦盛)
友なりけり

ⒸO-DAN

憎しみをどこまでも見果てぬ夢に。
負の気持ちすら包みこんで物語に。