2023年1月28日、奈良県桜井市まほろばセンターへ。
文化庁主催の子供たちの伝統文化の体験事業「奈良県伝統文化を親子で体験しよう 絵巻のハンズオンと文化財修理体験」に参加のため。講義内容は、差し障りのない程度の紹介に留めます。
先ずは、絵巻のハンズオン体験。長谷寺縁起絵巻の精巧な複製を、直に手で触れて実践体験するのです。
講師は、総本山長谷寺広報の瀧口光記氏。長谷寺の現役のお坊様です。十一面観音菩薩立像の実物大の足の複製と共に、ごあいさついただけました。
なお、長谷寺縁起は、桜井初瀬の花の御寺長谷寺の、観音菩薩由来記です。
長谷寺縁起絵巻三巻は、この十一面観音の造立にまつわる諸々の奇譚、霊験譚を集成したものだが、その内容は、 寛平八年(九九六)に菅原道真が勅命によって作成したと偽托されている漢文の長谷寺縁起文を和文化したものである。
上巻は道真が長谷寺に入って縁起文を筆する段を巻頭において、この縁起絵が由緒正しいことを示し、次いで、古くからあった本長谷寺の縁起を第二段に描くが、第三段以下は、本尊造像に尽力した徳道上人の誕生から出家、修行、寺院建立の決意、仏像造立の祈願を第七段までに描き、第八段は徳道が師の道明に教えられた霊木について、古老にその由来をたずねるところ。第九段以下第十二段は古老の語る霊木出現の経緯や、この木が人々にたたりをする説話を四話載せ、第十三段で徳道が里人からこの霊木をもらいうけた事をのべる。
〔中略〕
以上が長谷寺縁起絵巻の概要であるが、これを大別すると、徳道上人の事蹟、十一面観音像の材料となった霊木にまつわる説話、十一面観音像の造立、行基による霊場巡歴 (長谷山内の紹介)、長谷寺造営と寺の景観がその主要主題になっている。その中でも注目されるのは、霊木にまつわる霊験説話と行基の巡歴した霊地で、いずれも観者の興味をそそるものである。宮次男『名品鑑賞 長谷寺縁起』
ハンズオン、うちの息子は小さなお子さんたちへ先に譲り、一番最後に絵巻に触れました。
絵巻の動画も視聴できました。
最初は乗り気でなかった息子、複製でも絵巻の実物を見たとたん、目が輝きました。
うちの息子は我流と独学で、高山寺鳥獣戯画絵巻を複製模写しているのです。
親バカですが、すごく上手です。
「めちゃ楽しかった。勉強になった。模写に活用する」と息子。
無理やりでも連れてきて良かった。
私、ひと安心。
次の文化財修理体験は、屛風・掛軸の構造模型を用いた文化財修理についての講座。
講師は株式会社文化財保存の今田淳氏。なんと、文化財保存の会社があるのです。
たくさんの紙の種類。紙の強度について実地調査。
紙は1種類につき縦と横があり、それを全種類でクロス勝負します。結果は、予想通り。
次は紙の繊維の確認。紙に縦と横に水で線を引き、裂きます。
これらの毛羽立ちが、文化財修理にいかに重きを成すか、和紙の偉大さを実体験できました。
イベント終了時のアンケート、子どもたちに将来こういった文化財修復の職に就きたいか等々。
なんとまあ、こんな奈良らしい青田買いもあるのかと、私、感服。
夕陽を透かす美しい和紙の切り貼りに、おかみ、文化庁も未来に向けて小刻みでも動いている事実を重ね、まほろば奈良に生まれ育つことの意義を、再燃して問わずにいられませんでした。
古墳に眠る神代の王の招きか。
旅する十一面観音の導きか。
奈良盆地の東の桜井の地で、母と息子で、なんの因果で、今日、文化財修復にいざなわれているのかと。