2021年6月21日、橿原市の天香久山のふもと、飛鳥まぁまぁ農園さんへ。
明日香村から北上、雷の丘あたりで、車窓から東の桜井の山並みを写す。
雨で雲海が湧き、すんばらしい光景。
集合先の集会所、南浦町構造改善センターは、飛鳥まぁまぁ農園こと上田邸の目の前。
ここで先ずはレクチャーを受けます。
主催の上田かおりさんは、とってもとっても素敵なお母さん。
大阪谷六シティガールが農業に開眼、天香久山のふもとで飛鳥を見渡すこの最高のロケーションのお屋敷、ここらに住みたいと付近を散策中、なんと売家の貼り紙を見つけ、念願の移住が叶ったとのこと。
「天岩戸神社さまにお祈りしたよ、ここらに住まわせてくださいって」
奈良は古い土地柄、盛大に打たれた広告より人伝で良い物件が取引される面があり。
かおりさん、ここに呼ばれたんやな。
用意された水田へ。雨、ざざぶり。
うちの息子、尋常でない雨男。
なにしろ、丹生川上神社の三女神の龍神様に守られているので。
待っておられたは、かおりさんのお仲間、飛鳥稲渕ココロネFARMの迫田さん。
「絶好の田植え日和ですね!」
迫田さんの言葉に、一同破顔一笑。
手前、田に筋をつけるトンボです。これで縦横に格子を描いて、交差する点に苗を植える。
初めての米作り、すべてが新鮮です。
本日参加の親子グループは10組。
うちは主人が乗り気で、息子は微妙。でも、田んぼに来て、苗を渡されたら、息子、雨でも楽しそうに。
靴下で田んぼに入ってもいいと言われましたが、みんな裸足になっていました。
だって、気持ちいいもの、土の中。
なんだろう、DNAが騒ぎます。
これから稲の成長の始まり、それに携われる、誉れだと。
昔は梅雨の時期に田植えをしました。
今は米の品種改良などにより、5月の田植えが普通だとか。
実際やってみてわかったのは、梅雨の温かい雨の中での田植え、すごくラクなのです。
これ、晴れた日の田植えだと、厳しい陽射しで体力を奪われていたかと。
「稲を植えるのは難しくないよ。土から足を引っこ抜くのが大変」
息子を始め、参加の子どもたち、みんな真面目に黙々と田植えに精を出していました。
日本人って、ちゃんとしてるよな。
そもそも、何かを作る、生き物に接する、ちゃらっぽこではできへんよな。
あかん、もう我慢できへん!
私は撮影をうっちゃり、雨の中、裸足で田植えに向かいました。
まあ、楽しいこと、自然の中で、梅雨の慈雨にまみれて、土と草と水と少しの陽射しと、暖かい初夏の風に包まれて。
ふと南を向けば、飛鳥の都跡。
民を守るために王はある、それ以外に王の職能はなく、だから天皇は祭祀として米を――
――米があれば、なんとかなる。
初めての稲作の感想はそれでした。
田植えが終わると、雨が上がりました。
体中の泥を洗い流して一服、かおりさんお手製の梅ジュースをいただいたあと、餅つきです。
糯米に古代米の緑米がブレンド。
息子も参加。
杵を扱うのは難しい。
剣道している子は、早くコツがつかめるそうです。
自分で丸めたお餅。
かおりさんお手製の醤油と黄な粉で召し上がれ。
「米があれば、なんでもできるんやで。私は麹も米粉も米麵もつくるよ。
お米食べてな、元気が出るから。
土に触れて、自然に触れて、そしたら心も体も元気になるよ」
田植えが終わった後の労いの膳を早苗饗(さなぶり)と言います。
まさにこういったものだと。
「箸墓の東の田んぼで、古代米の赤米つくってるよ。いつでも見に来てな。
あと、まだ田植えはするから、手伝いに来てくれたらうれしいわ」
「箸墓の田んぼ、古代米が実ったら、ほんまにきれいやで。
あと、今年は蛍の当たり年。さっき田植えした田んぼの川もやけど、飛鳥の稲渕においで、蛍が手に停まる」
集会所の裏、天香久山と飛鳥まぁまぁ農園。
自給自足ができる国になれば、もっと地に足の着いた国になるのかも。
お百姓さんの苦労は並大抵ではない。
でも、入り口は楽しいものであれば、もっとたくさんの人が関われる。
働いて得た早苗饗の美味なこと。
体が動けば、心も動く。
神の山のふもとで思ったことです。