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2021.5.4 太子の御跡(みあと) ―聖徳太子1400年遠忌記念特別展「聖徳太子と法隆寺」―

2021年5月4日、毎度お馴染み奈良国立博物館。
聖徳太子1400年遠忌記念特別展「聖徳太子と法隆寺」が開催中。

小学生向けの関連イベント「聖徳太子ジャンボすごろく」に参加。
地下の会場に出向くなり、「瓊花さん、いつもご参加ありがとうございます」と奈良国立博物館の職員さんにお声かけられ。
「やー、もー、イベント参加は毘沙門天展以来ですよ、なんでそんな記憶してはるんですか」と私。
「ママ、どこ行っても覚えられてるよね」と息子。
「ママ、悪目立ちするからな」と主人。

ま~、でっかい双六!
聖徳太子の一生を、徳を積みながら辿ります。
奈良県が企画編集した冊子『わくわく日本書紀すごろく』の1つを拡大したものです。

特別ゲスト、せんとくん。参加者3人のために、豪華ったらありゃしない。
奈良博のイベント、いつもこうです。
申し訳なくなってしまう。

うちの息子が最年長。
でも、他のお子さんふたりとも背筋がピンと姿勢良く、息子ふにゃふにゃ目立つ目立つ。

うちの息子は私の趣味に引きずりまわされているだけですが、それにしても、博物館イベントに参加するお子さんは皆、利発で礼儀正しい子ばかり。

ワークショップで太子の功績を辿る。
推古天皇の摂政になった、ここは必ずストップのポイント。
ここで自分の夢を語ります。

「何かの、博士になりたいです。研究して、答えを出したいです。何かは、今、考えています」

へー、そんなん初耳!
うちの息子の自己プレゼンに、私も主人もおったまげ。
職員さんたちも「おー!」と拍手。

息子、一番でゴール。
必ずストップのポイントはもう一か所ありまして、冠位十二階制定の場面。
ここで、みんなの好きな色を言って、自分とかぶった人がいれば5点ももらえます。

女の子がそこで止まったとき、「オレンジが好き」とのことで、しかし他にオレンジが好きとの応答がなかったので、私、息子に身振り手振りで「『僕もオレンジが好き』って言って、助けてあげ~!」と唆したのですが、伝わりませんでした。

10歳男子、まだ無理か、そんな高度なイケメン技は。

息子、1点差で1位。豪華な賞品が贈られました。
でもおそらく、順位関係なく中身は同じものだと思います。
そうでないとアカンと思います。

せんとくんと記念撮影。かぶりものキャラが苦手な息子、ぎこちない。

今日のイベント、息子はアンケートで100点と答えていました。
「参加するまで緊張なんやけど、参加したら結局、面白いねん」とのこと。

聖徳太子に関連する広報誌がたくさん。
奈良博ではエフェメラ入手が楽しみ。

「夏にまたイベントします。瓊花さんお越しください、待ってます」と職員さんよりお招きいただきました。

……了解!

聖徳太子と法隆寺の特別展を観て、お昼はならまちの茶の湯さんへ。
足湯カフェ、1年ぶりです。

私は今回、米糠の足湯にしました。柑橘系のアロマオイルの芳香がマスク越しでもうっとり嗅げます。
主人と息子は、茶の葉の足湯。

ワークショップのおみやげは、『わくわく日本書紀すごろく』の他に非売品の正倉院の五弦琵琶リフレクター、蚊帳ハンカチ、シール、栞、絵葉書、そして。

昨年東京国立博物館で開催された日本書紀成立1300年特別展「出雲と大和」の図録。
この展覧会、すごく観たかったので、この図録を見た瞬間、飛び上がりました。

今回の奈良博の聖徳太子と法隆寺の展覧会も、あの玉虫厨子を間近で観られただけでお釣りが来るほど豪勢でしたが、この出雲と大和の展覧会、どれだけ力が入っていたか、図録をめくるたびため息が出ます。
開催期間をコロナで途中で切り上げられて、本当に残念な展覧会だったと思います。

さて、私は生まれも育ちも奈良県ですが、出雲と大和に争乱があったとは、あんまりピンと来ないのです。
むしろ合理的な関係性を結んでいたんじゃないのかな、と。
なんでもかんでも啀み合いに結び付ける、その短絡思考、どうかな、と。

それに、私は大和盆地の西側、葛城地方の出身なので、東側の三輪地方はawayでもあります。
出雲は三輪と関わり深い。だから私は出雲と大和の関係性に対してさほど思い入れがないのかもしれません。
私の祖母は三輪地方の出身ですが、やっぱり生まれ育った二上山の光景を私から消し去ることは不可能です。

しかし、氷室冴子さんの小説『ヤマトタケル』での、イズモタケルを騙し撃つシーン。
大和から侵攻する者として、私もヤマトタケルに共感し尽くし、その卑怯に共に打ちひしがれました。

中央から辺境への支配は免れ得ません。しかしそれは争乱とはまた異なります。

私は、ヤマトタケルの眷属、隠れもしない、中央の末裔です。

ヤマトタケルを、大和の為政者を、哀れみながら、イズモタケルは最後の最後まで薫り高く、微笑みながら死んでいきました。
私には出雲とは、そう思えるものです。

茶の湯さんの今日の献立。
すき焼き風のホイル焼き、サーモンとツナの胡瓜巻き、ポテトサラダ塩麴漬け半熟卵添え、五種きのこのトマト煮、ほうれん草の胡麻和え、胡麻豆腐、ひじきの煮つけ、切り干し大根、ワカメとお揚げの味噌汁、玄米ご飯。
おいしそう!

メイン料理が献立の案内看板の豚肉と違って牛肉で、その肉汁がコンソメみたいで、行儀悪いのですが、ご飯を空けた飯椀にそそいで無駄なく飲み干しました。
素朴ですが、味付けは深く、どれもこれもおいしくて、主人も息子も無言で貪っていました。

デザートの苺ソース添えヨーグルト。そして、ほうじ茶。

今日はご亭主のお母さんも加勢されて、賑やかな和やかなおもてなしでした。

いつ来ても、ここはほっとする。
少し駅から離れていますが、それが彷徨う小旅行の醍醐味。

太子の御跡を辿る、それが今年のメインテーマ。
秋には大阪市立美術館で特別展「聖徳太子日出処の天子展」が開催されます。

世間虚仮唯仏是真と言われると、心底悲しくなるのですが、それでもこの世を生き貫くしかない。

「仏教伝来の何がすごいの?」と息子に問われ、「仏教は、宗教だけじゃない。あの当時の思想で法律で文化で、仏教はあの当時、世界を測る物差しだったの」と答える私。
「仏教で、世界を知ったの?」と息子。
「世界の入り口を、ね」と私。