ならだより

2020.12.27 「風の森」のお酒を買いに西大寺まで

クリスマス当日は金曜で仕事でしたので、ChristmasPartyは26日土曜の夜に。
ケーキもピザもチキンも出来合ですが、フルーツポンチは作りましたで!

橿原市の洋菓子屋さんPâtisserie Neiroのクリスマスケーキ。人気急上昇中のお店、クリームがとてもフレッシュで、さすが噂にたがわずのお味。
しかし、橿原市まで出向いて買ってはいません。
クリスマスの食材すべて宅配していただいているので、たいへんラクチン。

自炊の技術は身につけていますが、やはりフルタイム勤務をしていると、献立はプロに任せたほうがいい。
くたくたになって帰宅して、夕飯の買い出しや献立を考えるなんて、ぞっとします。
何も考えずレシピ通り作ることの気楽さ。考えるということは、パワーが必須なのです。

仕事で疲弊した脳をこれ以上酷使することもなく、管理栄養士によってカロリー計算された野菜メインの献立では太りようがなく、自分では絶対に作らないメニュを作れ、余計なものを買うこともない、bestです。

食べるものは自分の肉体の素となる。だからといって、私は料理のことで悩みたくない。
私はもっと別のことに脳を使役したい。

私は自分の弱点を知っているので、食材宅配サービスを利用しているのです。
結果、良いことばかりです。

2020年12月27日、年末も差し迫った今日、近鉄大和西大寺駅から徒歩8分ほど、「酒商のより」さんへ。ここは奈良の珍しい地酒が揃うお店。
主人は今日が仕事納めで、私と息子とふたり、電車で、お正月のお酒を買いに行きました。

お目当てのお酒も手に入れられ、日差しが暖かい日だったので、最寄りの西大寺へ立ち寄りました。
右手に東塔跡、左手に本堂。

西大寺にお参りすると、当然ながら孝謙天皇のことを考えます。
東大寺を建立した父聖武天皇に倣って、孝謙天皇はこの西大寺を建立した。

しかし、父の心は、基王と安積親王、この早世した二人の息子に向けられ、藤原氏の権威を十重二十重にまとった娘の阿倍内親王のちの孝謙天皇には、あまり向けられていなかったのでは。

そのくせ、父は娘に「奴隷を天皇に、天皇を奴隷に、どのようにでもできる」と古代王権の魔力を吹き込んだ。
梅原猛先生の著作『海人と天皇』の着眼点、是非はさておき、あざといくらいツボを突いたはる、そう思うのです。

後世、孝謙天皇のあまりの低評価に、「あなたどんだけ嫌われたのさ」と気の毒になります。
同じ独身の女帝の先輩、元正天皇にはこんな悪評は皆無で、それは単純に元正天皇が派手に動くことがなかったからで。

聖武天皇の苦しみを孝謙天皇なりに晴らして差し上げようと働きかけて、それが全部裏目に出たんだな、と。

動かなくてもいいのに動いてしまう。
こんな余計なこと、持統天皇なら絶対にしない。
元正天皇は祖母の持統天皇からの指南を直接拝聴することが可能でしたが、平城京では藤原氏に呑みこまれる、すべてが。

ここ寧楽の都で、持統天皇は飛鳥の都の天皇だと、しみじみ思い知らされました。

奈良県御所市の油長酒造さんが心をこめて醸された日本酒、風の森です。風の森の銘柄は酒類が多く、これは特別栽培米で醸した、お正月のお酒なのです。
御所市の神代から続く高鴨神社のふもと、実際に地名が「風の森」。葛城山からの吹き下ろしに晒される、文字通り、「風の森」なのです。

金剛山の麓の杉浦英二さんの田んぼで、農薬化学肥料不使用で大切に育てられたお米、秋津穂。こんな丁寧な説明文を記したラベル、初めて。

農家酒屋 | 杉浦農園と風の森が里山保全のために立ち上げたプロジェクト

のよりのご亭主が「1本だけでいいですか?」と。
「どれかお薦めありますか? 私、風の森さんのお酒、初めてなんで」
「扁平精米って新しい試みで醸造されたお酒が入荷されてね、これが最初で最後かもしれないから、是非飲んでほしいです」

扁平精米とは? なんかもうよくわからないのですが、私は敬服すべき先達の言うことには素直に従うので、ご亭主お薦めのお酒を追加で買いました。

2本買っても3,000円です。油長酒造さんは、みんなの食卓に普通にあるお酒を造りたい、それも無濾過・無加水・生酒で。そんな高邁な精神で日本酒に取り組んでおられる、真摯な蔵元なのです。

油長酒造株式会社
油長酒造株式会社 | 風の森、鷹長、日本清酒発祥の地から

今年は中止されましたが年末直売以外、風の森のお酒は蔵元では買えません。数少ない酒屋さんにだけ卸されていて、その1軒が、のよりさんなのです。

いつも気になっていた風の森のお酒。その幻ともいわれるお酒を求めて、私は西大寺まで出向いたのです。

来て良かった。
のよりのご亭主もレジ横の冷蔵庫のいちばんご自分に近いところに、風の森のお酒を大切に冷やしておられ、この誠実な蔵元のお酒をどれだけ大切にされているか、一目で理解できたから。

風の森のお酒、私の産土の二上山麓を南下した金剛山麓、古代豪族葛城氏の本陣で醸されるお酒、生粋さによる原点から改革を目指した味、お正月に封を開けるのが楽しみな日本酒です。