2020年12月19日、息子の術後1か月の診察にて奈良市街まで。寒い、雪が降りそうな曇天でした。経過良好で診察終了。餅飯殿町の商店街をぶらぶらすることに。
普段の土曜日より人足は疎ら。
いつもなら行列ができている「肉のおかにし」も空いていて、名物のコロッケをすぐ買えました。
なつかしい味、久しぶり。
昼食は、先日訪れた「とよのあかり すずの音」。主人のお目当ては、1日5食限定のレア親子丼。潰したての大和地鶏と生玉子の黄身。主人「無茶苦茶うまい」と大喜び。
他のお客さんたちの注文も続き、レア親子丼、あっという間に売り切れ御免。
生肉が食べられない私と息子、定番の唐揚げ定食を注文。さくさくの衣、しつこくなくて美味。相変わらずお値打ち、ガッツリ大量。
主人がいい気になって正午だというのに試飲目当てに日本酒醸造元「今西清兵衛商店」まで、ならまちを南下。奈良県民は蔵元の代表銘柄を屋号として「春鹿」と呼んでいます。
春鹿さんでは、利き酒グラスを500円で買うと、 5種類のお酒を試飲できるのです。
冬の季節は緑のグラス。正倉院伝来のサーサーン朝ペルシアの瑠璃碗にちょっと似ています。
春は桜色、夏は水色、秋は藤色、購入時は自由に色を選べます。
グラスの底に、鹿が。
本日の利き酒ラインナップ。すっきりから徐々に濃厚な味へ。
私はほぼ下戸ですが、日本酒は好きで、一口味わって、残りは主人に飲んでもらいます。
日本酒は、ほんとうにいい香り。お米の香り、たまりません。
春鹿さんの店内。雰囲気が抜群。奈良の街は酒屋さんが多く、俳優の三田村邦彦さんがしょっちゅう訪れて、飲み倒しておられます。
テレビ大阪の旅番組『おとな旅あるき旅』で、「幸せだなぁ、僕は奈良にいるときが、いちばん幸せなんだぁ」と三田村さん、若大将を真似て心情を吐露しておられ。
5番目の利き酒、「しろみき」。シュワシュワと弾けます。甘いようで後味は辛い、とてもおいしい濁り酒。
主人はこれを購入しました。
なんと、6番目のおまけも。発砲清酒の「ときめき」。これは飲みやすくて、ネットショップで複数購入しようと。
グラスを家で計量しましたら容量40㎖で、利き酒ではこれに溢れるくらいそそいでくれるのです。それが6杯、つまり1合余裕で超えます。
お口直しの奈良漬も美味で、立ち飲み代わりに訪れるのもあり。
いや、立ち飲みの店よりはるかに健全な場所です。
奈良漬とお水で我慢の息子、「お米のお酒、いい匂いする。ビールはそう思ったことないけど」と悔しそう。
あと10年したら、一緒に飲もうね。
いっぱいやって、体も温まり、午後から用があるので駅まで向かいます。
興福寺の五重塔と、辷り坂と五十二段。その前の辻は六つに枝分かれして、六道の辻と呼ばれています。
寧楽の都らしい、最もな場所。しかし、ここは辻が六つもあるので、うかうか立ち止まっていられません。
人がそれぞれ行き交う辻、だから、そこには人外の者しか留まれないのでしょう。
猿沢池、九重の石塔と、采女の衣掛碑。右手に南円堂が見えています。
すまじきものは宮仕え、采女伝説は、どの時代どの世界にも頒布する、支配する側とされる側の悲劇。
殺されても、イヤなものは、イヤだ!
そう心のなかで叫んで、黙って自分の意志をつらぬいた。
猿沢池の采女は、もう、死ぬしかなかったのでしょう。
だとすればそれは自殺ではなく、追い詰められた果ての、自決です。
五十二段の右手、左府の森です。院政期、保元の乱、悪左府藤原頼長が落ち延び潜んだ場所。
悪左府については、下記の与力さんのブログ『Literacy Bar』の記事がとんでもなく面白く、なおかつ史観としても理に適い、お薦めです。
2012年の大河ドラマ『平清盛』で藤原頼長を演じられた山本耕史さん、まさに悪左府そのもの。公家の善し悪し見事に体現されていて、しびれます。
頼長のお父さんの関白藤原忠実を演じられた國村隼さんも、絶品です。
あー、また『平清盛』観なきゃ。
六道の辻、ここらあたりは何百回と通り過ぎた場所。それでも、いつ見ても、新鮮。それは、奈良の空気が澱まないからかも。いつ来ても、ここの空気は澄んでいる。
一見、文化のどんつきの寧楽の都、いやいや、きちんと文化を披露目ているのです。
幸せだなぁ、 僕は奈良にいるときが、 いちばん幸せなんだぁ。
三田村邦彦『おとな旅あるき旅』