2019年5月19日、盛りだくさんのイベントが午前と午後に。
午前は、奈良国立博物館の親子ワークショップ、抹茶体験に参加。
茶論(さろん)奈良町店の講師の方と奈良女子大学茶道部の方々が、子どもたちへ薄茶手習をご教授。
先ず、保護者がお手本として薄茶を点てます。
私は一応、5年ほど裏千家のお茶を習っておりました。
二十歳の頃、春の吉野山で野点のバイトもしました。1日で100杯ほど点てたことも。
お菓子、とてもきれいな菫色。
銘は「瑠璃」。曜変天目茶碗に合わせて、でしょう。
めずらしいお菓子、葛焼きです。
立夏のこの季節にふさわしい、色、銘、味、光を透かして、きよらか。
「息子よ、はい、どうぞ」
「ママ、抹茶の色、お菓子に合うね」
「夏の色、やね」
「5月って夏なんや」
「次はおらが点てる番」
「漆塗りの上等な棗。子どもにこそ良いもの、使わせてくださるね」
「むずかしい~」
「センスあるよ、上手上手」
「だんだんおもしろくなってきた」
「お茶って、遊びやから」
「ママ、お味はいかかですか?」
「甘い! これは上等な抹茶やわ! 葛焼きも、こんなきれいな色、初めて!」
「なんかぜんぶ上等やね」
「奈良博から子どもたちへの真心やな」
お茶会のあとは、奈良博の庭園巡り。なんてうつくしい五月の新緑。
八窓庵。一般公開はされていません。
奈良三名茶室のひとつ。古田織部好みの、かーっこいい茶室です。
いろいろすごいのですが、色紙窓はやっぱりグッときます。
織部の意匠は誰が見たってかっこいい。
洗練されているのに、どこかに抜けというか、遊びがあります。
のびしろたっぷりの男、そんな感じです。
息子にひっついてこそ参加が叶った奈良博の催し。
眼福以外の何物でもない。
息子に茶道の面白さはまだピンと来ないかもしれませんが、抹茶の色した奈良博の庭園を数寄者の母が浮かれ歩いていた姿は、その記憶に留まることでしょう。
午後からは西ノ京、唐招提寺。
中興忌梵網会(うちわまき)の法要へ。
奈良博の親子ワークショップで製作した絵うちわが供えられた講堂での法要に、お招きされたのです。
金堂と講堂のはざま、鼓楼。ここからうちわがまかれます。
講堂での法要は、声明と舞楽の伴奏とが綯い交ぜとなり、ふっと、鑑真和上の言葉を思い出しました。
愁うることを須いざれ、宜しく方便を求めて、必ず本願遂ぐべし。
これ仏法のための事なり、何ぞ身命を惜しまんや。
ここまでの和上の意志の高みまで私が及ぶことはありえませんが、「思い悩まず、正しい道を進めば、必ず最後までやり遂げられる」との心の持ちようは、骨に刻めました。
講堂から眺めた舞楽。
鼓楼から眺めた舞楽。
とても風の強い日でした。
右下、鼓楼。手前はもちろん、金堂。
うちわまき、息子が観るのを嫌がりました。
殺気立った空気、触れたくないとの言。
「やさしい気持ちのまま、帰ろうよ」
そう促されると、肯かざるを得なくなりました。
うちわまき自体、とても楽しいお祭りです。
地元の方々は始まる15分前くらいにゆったりと出向く、それくらい窮屈でないお祭りです。
唐招提寺のアプローチ。西ノ京の風景、大好きです。
薬師寺。西塔の水煙。東塔はもうしばらく修繕中。
風薫る皐月、息子の初めてのお茶会と法要、でした。