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2018.6.11 東大寺の見学会

2018年6月11日月曜日は休日参観の振替で、息子は学校が休み。その日は東大寺の大仏奉賛会の総会。錚々たる東大寺の高僧各位と関西の名士が務める理事が居並ぶ中、私と私の息子も末席に座らせていただけました。

東大寺寺務所は旧東南院で、緑萌える美しい庭園が拡がっています。20数名の一般の総会参加者より理事や東大寺側の人数のほうが多いなか、息子、大物、ひとりお絵描きをしたり、本を読んだり、臆することなく静かに、1時間の総会を過ごしていました。

総会後、理事および東大寺の高僧各位へ「けっしてズル休みではありません、今日は学校の振替休日なのです。東大寺が大好きな息子、総会後の見学会に参加させてあげたく、前もってお認めしていただき、今日ここへ参りました。説明もなく、ご迷惑をおかけいたしました」と、ご挨拶に伺うと、皆様一様に満面の笑顔となられ、「僕、よう参ってくださった。今からは奉賛会の方だけに許された東大寺の見学会、ぜひ楽しんでお参りや」と、温かいお言葉を施してくださいました。

そして向かった先は、二月堂の本堂。本堂は、一般参拝客は立ち入り不可です。内陣は絶対秘仏の十一面観音、何があっても入れません。その周囲の外陣を、ぐるり隈なく見学させていただきました。

ああ、いつも回廊から眺めていた内陣だ。それが目の前に。絶対秘仏の十一面観音は、岩盤のうえに立っておられるとか。水の神を火で敬う、ゾロアスター教の遺香。感動というより、しみじみしました。どういったご縁が巡って、私と息子はいまここにあるのだろう、と。

二月堂、三月堂、四月堂と、説明を受けた息子は「一月堂はないの?」と私に訊いてきました。「あるよ。さて、どこかな?」との私の問いに、息子は「山の中かな」と即答しました。
う、鋭い! 京都と奈良の県境にある笠置寺が、そう、一月堂なのです。無論、山の中。
私が息子に唖然としていると、総会出席者の会員さんたちが「僕、賢いな。東大寺で得度したらええわ。みんな喜ばはるよ、管主さま迎えに来はる」と私を慌てさせる言葉をかけられました。息子は一言「ママのそばにいたい」と、これまた即答しました。
「そやな、お母さんが東大寺さんへ、僕を連れてきてくれたんやからな。なあ僕、お水取りの行においで、みんな待ってるよ」と、お誘いを受け、息子は頷きました。
皆さん笑って、その日は帰路へ。

「どうして一月堂が山の中にあるって、思ったの?」と私が訊ねると、「二月堂の向こうには、もう山しかないから」と息子は答えました。
ひえっ、ほんまや! すごいな、子どもって。
健やかな目で見る景色こそ、真実です。