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2025.2.21〜23 雪片が舞い落ちるたびに興味の火花が天から降ってくる

2025年2月21日から3日間、奈良大学通信教育部のスクーリング、歴史地理学に参加。担当教官の土平先生の講義、ひたすらエキサイティングでした。

さて、この記事、講義の内容には触れません。私は地元の葛城地方の集村について、こんなにドラマティックに古代から現代まで続く「水と川の都の奈良県」を明確なフィールドワークでもって語り明かしてくださった土平先生に、感謝の念すら懐きました。

さて、スクーリング中日の学外授業、ここは葛城市歴史博物館。床に詳細な航空写真の地図、そして私の足。

葛城市の忍海(おしみ)の集落。この、何気ない山裾の村落に、土平先生は重層構造の歴史地理学を展開されました。

ちらほら雪が舞う、とても寒い日でした。参加者は、43名だったかと。夏はこの倍は参加されるそうです。朝9時30分に近鉄橿原神宮前駅の中央口に集合、バスは1台できっちきち。同日、考古学特殊講義の学外授業もあり、そちらのバスは2台。2週間後の3月のスクーリングも、歴史地理学と考古学特殊講義が同時開催されるので、そのときはバスの台数も入れ替わっているかもしれません。

雪雲と吹雪にけぶる奈良盆地。正面に見える小さな二等辺三角形の山は耳成山、それより近くに見える右手の山は畝傍山、天香久山は背後の竜門山地の末端なので溶け込んでしまっています。

土平先生に「地元の方では見慣れた風景になりますね」と懸念されましたが、「視点が変わりますので」と私が答えると、土平先生、瞬時に得心くださいました。

ああ、美しい。冬生まれの私、白い魔物、雪を見ると胸がときめく。

左手の山は葛城山、ロープウェイの轍に雪が積もり白線になっています。その手前の右手の山並は、氏神の笛吹神社の杜。忍海の村落、およそ5㎞ほど歩いたかと。あまり疲れなかったのは、冬だから。これが夏の場合、疲労感はすさまじいと思います。私はここらへんの夏を知っていますので。

氏神の笛吹神社、葛木坐火雷神社(かつらきにいますほのいかづちのやしろ)が正式名。このお宮さん、雷の呼吸の使い手の我妻善逸の技「火雷神(ほのいかづちのかみ)」から、今では『鬼滅の刃』の聖地です。

拝殿。背後の小山は神域で、80基もの古墳を抱えています。古代の笛吹一族が眠る神の杜、です。

日露戦争の後、政府から奉納された大砲。太平洋戦争での鉄資源供出を免れた、珍しい大砲です。

子どものころからドライブついでに立ち寄っていた笛吹神社、今日はまったくちがう、歴史の年輪の溝から音が流れてきそう。それに針を落とすのが、研究者、なのでしょう。

さあ、御所市へ向かって進みます。関屋の地名通り、奈良県と大阪府の県境、古代からこの地に根差す、葛木水分神社(かつらきみくまりじんじゃ)まで。山間の神社、私は山が好きなので、どきどきしてきました。

水越峠、水越川、大和と河内、分けるものは、もちろんの、水。

帰路に着き、再度、忍海の村落を通り過ぎるころ、金剛葛城山脈からの吹きおろし。

私には庭のような葛城のふもとの村なのに、このガラス越しにも似た近寄りがたい威厳は何なのか。

なんて、おもしろいのか、この学外授業は。

西の空、左下の輪のような雲、彩雲。私のスマホのスペックでは、その虹の色は映し出せませんでした。

橿原神宮前駅で降車する人たち、もったいないな、と思いました。その後、今井町の美観地区を遠目に、橿原市忌部町から見た金剛葛城山脈に沈みかかる夕陽と吹雪、その荘厳さ。奈良大学まで北上するなか、土平先生の解説で眺める奈良盆地は、これまた私には異相であり、見慣れていた風景が本性を剥き出して、光り輝きながらこちらへ迫ってくるようでした。

こんな行き届いたスクーリング、ない。そう思いました。

真冬のフィールドワークではありましたが、歩けば体は温まり、むしろ快適で、昼食は暖房の効いたバス車中でお弁当を食べることが叶い、土平先生がこの20年間の奈良大学通信教育部のスクーリングの実地で掴まれたノウハウを駆使された結果、洗練されているとさえ感じました。

校外学習のみならず、教室もとても暖かった。特に私は乱視でスライドも見えにくいので朝8時過ぎには教室に入って、一番前の席に着いていたのですが、前の席ほど暖房がよく効いていたようで、願ったり叶ったりでした。これは、神話伝承論の教室でもそうで、後ろの席ほど寒いと感じました。

私が学友になった方たちは、皆、朝早くから教室の前の席に詰めている、そんな真面目かつ勉学に貪欲な方たちばかりでした。それはそうでしょう、類は友を呼ぶ、共通点がないような方とは知り合えることもない、当然です。神話伝承論でのHさんとも、文化財学演習ⅢでのCさんとも、席が近かったから、身近だったから、学友になれた。

雪は天から送られた手紙である

中谷宇吉郎

雪で良かった。浮つく心を凍らせて、確かに道を歩ませてくれたから。

良かった、雪で。

雪片が舞い落ちるたびに興味の火花が天から降ってくる

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